3話 静かに楽しく暮らしたい
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首尾よく召喚を成功させ、ウェイバーは得意絶頂のうちに今日という日を終えるものと、そう本人は期待していた。
にっくき鶏との激闘に費やされた昨晩とは打って変わって、今夜は大義を果たした心地よい疲労に浸りながら、満足のうちにベットに就くはずだった。それが──
「……どうして、こうなる?」
空っ風の吹きすさぶ新都の市民公園で、一人寒さに身を縮みこませつつベンチに腰掛けているウェイバーは、いったいどこをどう間違えて自分の予定が裏切られたのか、いまだに理解しきれない。
召喚は成功した。まさに会心の手応えだった。召喚の達成と同時に、招かれたサーヴァントのステータスもまたウェイバーの意識に流れ込んできた。クラスはライダー。
三大騎士クラスの括りからは外れるものの、基礎能力値は充分、宝具も強力といった申し分ない強力なサーヴァントだ。そのサーヴァントが契約を済ますはや否や『必要なものがある』といきなり言って商店街に行ってしまったのだ。そんな、行動に一瞬唖然としてしまったが、ウェイバーは急いで後を追ったのだ。正直なところ、夜中に街中を出歩くのは気が引けたのだが、──それというのも近頃、冬木市では猟奇的な殺人事件が頻発したせいで、警察が非常事態宣告を発令していた──ウェイバーにとっては巡回中の警官に見咎められて職務質問を受ける危険より、『必要なものがある』といって行ってしまったライダーが何をしでかすか、という危機感の方が重大だった。
幸いなことに、ライダーは雑木林から出るや否や、掻き消されるように不可視になった。
サーヴァントならではの霊体化、という能力だろう。
奇抜な格好のライダーと連れだって歩いたのでは不審人物に見えてしまうので、その点はウェイバーも大いに助かったのだ、──そうして、一人取り残されて待つこと三十分あまり。
「何なんだよ、全く…」
さっきまでの自分の醜態を思い返して、ウェイバーは頭を抱えた。いかに英霊であってもサーヴァントはウェイバーの契約者。主導権はマスターであるウェイバーこそが握っている。
第一、聖杯戦争の際に召喚されるサーヴァントは使い魔としては最高ランク、魔術よりも上にあるのだ。一般に使い魔という単語から連想される存在とは別格で、一線を画している存在。
その正体は英霊、神話や伝説の中でなした功績が信仰を生み、その信仰をもって人間霊である彼らを精霊の領域にまで押し上げた守護者。
其れでも、ひとたびサーヴァントとして呼び出された以上は、決してマスターには逆らえない。
その理由は、サーヴァントの現界がウェイバーを依り代としていること。
ライダーはウェイバーからの魔力供給によって現代の世界に繋ぎ止められているのであり、ウェイバーに万が一のことがあれば消え去るしか他にない。すべてのサーヴァントには、マスターの召喚に応える
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