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歪みすぎた聖杯戦争
3話 静かに楽しく暮らしたい
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人数なんて、ダイナマイトと一本もあれば一瞬で追い抜いちゃうのにさ。いや、いいんだけどさ。別に俺らが悪魔といっても、もし本物の悪魔が居たりしたら、ちょっとばかり相手に失礼な話だと思わない?
そこんとこ、スッキリしなくさぁ 『チワッス、我々は悪魔でありまぁーす?? 』 なーんて名乗ちゃっていいもんかどうか…」

だから今こうして自分達は古文書に書いてある通りに魔法陣みたいなやつを書いていたのだ。

「で、それは悪魔がもし出て来た時のための生贄?」

吉良が横目で軽く視線を移す。それは部屋の片隅に転がしてある生き残り──猿轡とロープで縛り上げた小学生の男の子だった。龍之介も吉良に続いて見るが幼い少年は泣きはらした瞳で、切り裂かれた姉と両親の骸を凝視してばかりいる。

「そうだよ〜 もし万が一 悪魔とか出て来たら何の準備もなくて茶飲み話だけっていうのも間抜けな話じゃんだからね、坊や……」

龍之介は上機嫌に怯える子供の前で愛嬌を振りまいた。

「もし悪魔さんがお出まししたら、一つ殺されてみてくれない?」

「……!」

龍之介の発言の異常さは、幼い子供であろうとも充分に理解できた。悲鳴も上げられぬまま、目を見開いて身を捩りもがくもがく子供の様を見て、龍之介はケタケタと笑い転げる。

「悪魔に殺されるのって、どんなのだろうねぇ。ザクっとされるかグチャッとされるのか、ともかく貴重な経験だとは思うよ。滅多にあることじゃないし──」

そう言いながら誘い笑いを掛けようと、吉良の方をみたら

「痛っ…」

右手の甲、だった。
何の前触れも無く、まるで劇薬を浴びせられたかのような激痛が吉良の右手にあった。
痛みそのものは一瞬で治まったものの、しびれるようなその余韻は、皮膚の表面に貼りついたように残っていた。

「なんだ…これは?」

痛みの退かない右手の甲には、どういうわけか、入れ墨のような紋様が、まったく心当たりのないうちに刻み込まれていた。
右手の紋様に不思議そうに見ているのも束の間、背後で空気が動くのを感じた取った二人は、さらに驚いて振り向いた。風が湧いている。閉め切った屋内に、決してあり得ないほどの気流。
微風にすぎなかったそれは、やがてみるみるうちに疾風となってリビングルームに吹き荒れる。
床に描かれていた鮮血の魔法陣が、いつしか燐光を放ちはじめていいるのを、二人は信じられない気分で凝視した。何らかの異常が起こることは、むしろ期待していたのだが──こうもあからさまな怪現象はまったく予想の外だった。
まるで龍之介が軽蔑してやまない低級なホラー映画のような、大げさすぎる演出。
子供騙しのようなその効果が笑うに笑えないのは、それが紛れもなく現実だったからだ。
もはや立っているのも危うくなるほどの突風
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