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幻聴
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来てみたわけだが誰も飛んでいなかったから、暇になってな」
 「そうだったのでありますか」
 「それであきつ丸はどうしたんだ?」
 「自分はカ号の調子が悪くて、直してもらったので飛行場を借りて飛行訓練をしようと思っていたのであります」
 「そうか」

 そう言うとあきつ丸は私に軽く頭を下げて、飛行場の真ん中へ歩いて行った。
 その後ろ姿を私は見送り、空を仰ぐ

 「あのプロペラ音はなんだったんだろうな」

 軽く体を伸ばし、執務室へ戻ろうとした私の耳にまたぶぅんと言う音が聞こえてきた。
 驚いてあきつ丸の方を向くが、あきつ丸の方から聞こえてくるのはヘリコプターに似た音しか聞こえてこない。

 「空からか……?」

 先ほども確認して何もなかった空をもう一度確認すべく空を見上げる。

 「!!?」

 そして、零戦が編隊を組んで飛んでいるのを見て絶句した。

 (何故こんな所に零戦が!?誰も飛ばしていないのに)

 よく見てみると先頭の零戦の垂直尾翼部分に『I−102』と書かれている。

 (あ、あの機体……もしかして『零戦虎徹』と言われたエース、岩本徹三!!?どういう事だ!?)

 夢じゃないかと思い、慌てて目をこする。
 だが、夢ではなく、岩本機を先頭とする編隊はゆっくりと飛んでいた。
 何となく帽子を取り、思い切り振ると零戦の編隊が大きくロールし、低空に侵入、俺の目の前を通り過ぎていく。
 その時、コックピットの中で岩本徹三らしき人物が俺に手を振り、そのまま急上昇し雲の向こうへと飛んで行った。

 「夢、なのだろうか………」

 先ほど自分で確かめたのに、信じられない。
 私は呆然と零戦の編隊が消えた空をあきつ丸に揺さぶられるまで見つめ続けていたのだった。



 「全く帰ってこないと思ったら、ずっと呆けていたんですか」

 執務室に戻ると「この忙しい中長時間開けやがって」と言う艦娘たちからの非難の視線を受けながら加賀の説教を受けていた。

 「まあ、いいです。貴方が作ったシステムで書類作業に割かれる時間は少なくなっているのだから、早く終わらせてください」

 そう言うと、着任した時よりもはるかに数の少ない書類を私の机に置いた。
 痺れる足をさすりながら私はペンを走らせた。
 さて、先程見た物を甘味を食べながら彼女たちに話して見ようか。
 どういう反応を取るか楽しみだな。
 特に瑞鶴は岩本さんと関わりがあるからな。
 さあ、張り切って書類を終わらせようか。




―エピローグ―

 「岩本さんを見た?」

 たまたま瑞鶴と一緒の席になった俺は昼間見た光景を話して見た。

 「そんな馬鹿な事がある訳ないじゃない、提督さん幻覚でも見たん
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