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101番目の百物語 畏集いし百鬼夜行
第十話
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 まあ、調べなくても名前くらいは聞いたことがある話だ。超有名、って言ってもいい気がする。

「で、ここからがハーフロアの説明なんだけど……あたしたちは、『世界』の認識がゆがんだところから現れるの」
「スイマセン、もう少し説明をください」
「いいわよ。まずメインの登場人物として、きれいな女性Aさんがいたとします」
「はい」
「Aさんはある日、たまたま大きなマスクをして歩いていました。まだ分別のつかない子どもはそれを見て、『あ、口裂け女!』と言いました」

 ありそうな話だ。子供なら、いいそうである。

「これはだんだんと子供たちの間で広まっていき、その噂を聞いた大人や学生といった層も、『この街には口裂け女がいる』と噂をして広めていった」

 何か物語でも語るような口調だけど、とても真面目な話なのだろう。だから、俺は何も言わずに聞いていきたいと思う。

「やがて、Aさんを見て『口裂け女』だと思う人が増えていきます。そうなっていけばいくほど、Aさんは『口裂け女』の体現であると認識されていき……Aさんは『口裂け女のロア』になってしまったのでした」
「え、ちょ!」
「どうしたの?」
「どうしたも何も……」

 今のテンの話。これがもし本当なら、かなり怖い話だ。
 最初、子供がそう言った。これだけなら、ちょっとイラッとするか、微笑ましい光景だと思う程度だろう。だがしかし、そこから噂が広がっていくにつれて多くの人がその人のことをそうだと思う。やがて、その人はその都市伝説の『ハーフロア』になる。とても信じられない話だ。でも。

「人の噂が、人間を『ロア』に変えるってのか?」
「この世界は大いに『歪んだ認識』によって存在してる。人の心は安定していないから、その歪みもどんどん現れる。そんな歪みは、やがて『世界からの認識のズレ』を発生させる」
「……で、『世界』がその人を『そういうロア』だと認識してしまったせいで」
「あたしたちは、人間でもロアでもない存在、『ハーフロア』になるの」

 あっさりと言ったが、俺やテンはそういう存在であるということ。俺はまだ理解しきれていないから何とも言えないんだけど、テンははっきりと理解しているだろうということ。だったら、なんでこんなにも簡単に話せるのだろうか。辛くは、ないのだろうか。

「そんなにあっさりと、噂されなくなったら消えてしまうような存在になるのか……」
「そういうこと。で、あんたは今」
「それになりかけてるわけだ」

 さて、一体どんな噂が流されたのやら……

「ちなみに、俺はどんなことをすればいいんだ?『百鬼夜行』の主人公って言うとぬらりひょんをイメージしちゃうけど、あれってよく分からない奴だった気がするし」
「知らないわよ、自分とは他のロアの物語なんて。
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