2話 運命は狂いだす
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、この意、この理に従うならば応えよ」」」」
全身を巡る魔力の感触。およそ魔術師である限り逃れようのない、体内の魔術回路が蠕動する悪寒と苦痛。それに歯を食いしばって耐えながら、ウェイバーはさらなる詠唱を紡ぐ。
「「「「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。」」」」
切嗣の視界が暗くなる。背中に刻み込まれた衛宮家伝来の魔術刻印が、切嗣の術を掩護するべく、それ単体で独自の詠唱を紡ぎ出す。切嗣の心臓が、彼個人の意思を離れた次元で駆動され、早鐘を打ち始める。大気より取り込んだマナに蹂躙される彼の肉体は、今、人であるための機能を忘れ、一つの神秘を成し得る為だけの部品、幽体と物質を繋げる為の回路に成り果てている。その軋轢に苛まれて悲鳴を上げる痛覚を、切嗣は無視して呪文に集中する。傍らで固唾を飲んで見守るアイリスフィールの存在も、もはや彼の意中には、ない。
召喚の呪文に混入される禁断の異物、招き寄せた英霊から理性を奪い狂気のクラスへと貶める二節を、雁夜はそこに差し挟む。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者──。」
雁夜は尋常な魔術師と違い、魔術回路そのものを別の生物として体内に寄生させている身である。それを刺激し活性化させる負担は、他の術者の痛みすら比にすらならぬほどの激痛だった。唱えるうちに四肢が痙攣し、端々の毛細血管が破れて血が滲み出る。無事に残った右目からも、赤く染まった血涙が流れ出て頬を伝い落ちる。それでも、雁夜は精神の集中を緩めない。
背負ったものを想うなら──ここで退けるわけがない。
「「「「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」」」」
そして、サーヴァントは地上に降臨する。
衛宮切嗣の前には白銀の甲冑を纏った騎士王が、
遠坂時臣の前には赤い外套の騎士が、
ウェイバーの前には、赤い雲の模様が入った黒い外套を身に纏っている格好で、
青い目に長い金髪の風貌の青年が、
間桐雁夜の前には全身黒のコートような格好で金髪のオールバッグの赤い目をした
男性が、
四人の前に全く異なる四体のサーヴァントが召喚された。
「「問おう」」 「質問だ」「問うぜ」
「貴方が」
セイバーはその翠の目で衛宮切嗣を見る。
「君が」
アーチャーはその鷹の目で遠坂時臣を見る。
「旦那が」
ライダーはその青い目でウェイバーを観察する。
「君が」
バーサーカーはその赤い目で雁夜を睨む。
「私のマスターか」
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