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歪みすぎた聖杯戦争
2話 運命は狂いだす
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しずつ確実に代を重ねる毎に魔術回路は薄れていき、兄の息子に至っては、残りかす程度が残っているに過ぎなかった。桜を引き取った間桐の家の真の当主、間桐臓硯の目的は優秀な魔術回路を持つ子供を孕む母胎を得る事だった。
雁夜が間桐の家に足を踏み入れ、臓硯に問い詰めた時、臓硯に見せられた桜の姿は既に雁夜の知る桜ではなかった。暗く濁った瞳で虚空を見つめ、刻印虫と呼ばれる蟲に全身を嬲られた桜は既に心を深く閉ざしていた。雁夜は桜を救う為に一年後に迫る聖杯戦争に参戦する事を決意した。その為には聖杯戦争で戦い抜くための力が必要だった。その力を得る為に、雁夜は桜に施された肉体改造を自らも受ける決意を下した。
全身を苛む痛み、全身を蠢く蟲への生理的嫌悪感、それらは徐々に雁夜の精神を削り続けた。だが、雁夜は耐え抜いた。一年間の苦行の末、雁夜は魔術回路の数だけで言うなら、、今の雁夜はそれなりの術者として通用するだけのものを手に入れていた。そして、遂にはサーヴァントを召喚できる力まで手にしたのだ。しかし、その代償はあまりにも大きく、髪は白くなり、肌には至る所に瘢痕が浮き上がり、それ以外の場所は血色を失って幽鬼ののように土気色になり、片方の眼孔は視力を失いかけていた、近代の医学の見地からすれば、すでに生体として機能しているのがおかしい状態である。にもかかわらず雁夜が立って歩いていられるのは、皮肉にも、命と引き換えに手に入れた魔術師としての魔力の恩恵だった。

「令呪が宿ったか」

しわがれた声で妖怪が嘲笑を含んだ笑みを浮べ言う。雁夜にとっては妖怪の嘲笑などどうでもよかった。雁夜の脳裏に浮かぶのは桜を救う一念のみだった。蟲倉に降りる前、桜と会った時、桜はもはや遠坂の姓であった頃の面影は微塵も残っていなかった。度重なる陵辱により瞳は暗く濁り、度重なる肉体改造により髪は間桐の色である青に染まり、彼女は子供らしさというものを完全に失ってしまっていた。
君を救ってみせる。そう言いたかったが否、雁夜には言える筈が無かった。もはや、桜には僅かな希望の光でさえ、苦痛にしか成り得ない。桜を救えるとすれば、それは雁夜が聖杯を手にし、間桐の鎖から桜を解き放つ事が出来た時以外にあり得ない。

「召喚の呪文は覚えてきたであろうな?」

「あぁ」

念を押すように訊いてくる間桐臓硯に、雁夜は闇の中で頷いた。
腐臭と饐えた水気の臭いが立ち込める、深海のような緑の暗闇。深山町の丘の頂に聳える間桐邸が、地下深くに隠匿している

「いいじゃろう、だがその途中にもう二節、別の詠唱をは差し挟んでもらう」

「どういうことだ?」

胡乱げに問う雁夜に、臓硯は持ち前の陰惨な笑みを投げかけた。

「なに、単純なことじゃよ 雁夜、お主の魔術師としての格は、他のマスター共に比べれば、いささか以上に
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