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乱世の確率事象改変
与えられた禊名
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 しなだれかかる体躯は幼く、扇情的な空気が発されることは無いはず……でありながら、男の片膝の上に腰を下ろす少女の表情は女のモノに相応しい。
 今生の別れとなるやもしれなかった時を越えて、まず溢れ出したのは歓喜。後に止まらなくなったのは、嫉妬だった。
 一人の少女の隣で本当に幸せそうな笑顔を浮かべていた彼が居たから、朔夜は嫉妬に心を燃やした。
 誰に……とは聞くまでも無い。
 黒麒麟と並び立っていた唯一の軍師が妬ましかった。だから、この状況は予測出来たはずで、彼は避けるべきだったのだ。

「朔夜――――」
「や、です」

 何かを言う前に飛んでくる拒絶。
 放すまい、と衣服を強く握りしめていた。離れまい、と身体をこれでもかと擦り寄せた。
 それを見やってもう一人、彼にしなだれかかる人物も同じ行動を取った。

「“ひなりん”もそろそろ――――」
「だ、ダメでしゅか?」

 問いかける翡翠の瞳を向けられて言葉に詰まった。

 月と関係を進めていたであろう彼の隣に、自分の知らない女が居た。嫉妬に心を燃やしたのは朔夜だけではなく、雛里も同じように。
 月や詠なら別に構わなかった。だが、自分の居場所だというように彼に甘える朔夜を見て、思わずもう片方の膝の上に乗ってしまって出来上がったのがこの状況。
 彼は頭を抱えたくなりながらも助けを求める視線を……目の前でゆったりと椅子に腰かける王に向けた。

「この状況を兵士達の全てに見せてあげましょうか? 皆してあなたを蔑むと思うけれど」
「それだけはどうか勘弁願いたい」

 助けを求めることこそが間違いである。相手は彼の一番苦手とする覇王。
 ただでさえ月と詠を侍らせ続けていたのだ。もはや幼女趣味の噂を止める事が手遅れであるのは言うまでもないが、季衣と流琉に親のような感情を向けている親衛隊の目線が一番厳しくなるだろう。

「秋兄様が、困っています。降りて、ください“雛ねえさま”」

 雛里を姉と呼ぶ事に決めた朔夜がジト目で見やった。自分が困らせている事を分かった上でシレっと言って退けるあたり、彼女は譲る気がないらしい。

「朔夜ちゃんが降りないと降りません」

 少しだけ譲りつつも拒否を示す雛里は、見せつけるように彼の胸に擦り寄った。ギシリ、と歯を噛みしめた朔夜もすぐに真似る。

――どうしろってんだよ……

 二人共に負い目があるから、秋斗は何も言えなかった。見た目幼女の二人にいいようにされている彼に、華琳は冷たい視線を向けるだけ。

「いい加減降りなさい二人共!」
「あわっ」
「うあっ」

 秋斗と華琳が何も言わないのなら、怒りの叱責が他の誰かから飛ぶのは当然。
 このままではいつまでもグダグダと時間を費やすだけだ。
 怒ったのは
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