与えられた禊名
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斗はそれをしたくないと暗に示していた。
「そうね……私の手札を増やすのなら、詠には完全な新参ではなくあの子達の家に所属して貰うのが一番よ。ただ、私としても無理強いはしたくない」
何故か、とわざわざ説明する愚を二人は犯さない。
詠であれば当然辿り着く答えであるのだ。説いて聞かせないのは才への信頼から。
――ボクが誰かの家に入るってことは……あ、そっか。その家の後ろ盾を得るのが目的か。
華琳の言葉がヒントになった。
詠本来の家は遠いし、彼女は死んだ人間として扱われている。それならば信頼を置いて貰えるような家柄を得た方がずっと利用価値が高くなるのは間違いない。
そも、この時代では養子を取る事は珍しくなかった。華琳の親にしても養子として曹家に所属したのだ。月の事も発想としては有り得たことで、詠が望むなら同じ事をしても構わない。
「誰の家に入っても最初は難しい立場になると思う。けど個人で成り上がるよりは何かしら利用した方が既存の文官を黙らせられるからな」
――確かにあり、だと思う。だって一番重要な事は、ボクが月をしっかりと支えられることだもん。
華琳に仕えている軍師達の家に入れば、それ相応な目で見られることだろう。
――訝しんで来る人は実力で黙らせればいいだけで……うん、いいかもしれない。
其処は負けん気の強い詠である。他の軍師達の誰にだって負けたくない。
袁家との戦が終わった今となっては、実力主義が通っている華琳の支配下でも、月と共に行動を行う場所は本拠地以外に据えて置くのが最善であろう。
下位の者達は命じれば言う事を聞くだろうが、人の心というのはそう簡単に受け入れてはくれない。
誰とも知らぬ馬の骨が上司になるよりも、家名という後ろ盾があった方が安心感も出るというモノ。
利害で考えれば秋斗と華琳の提案は詠個人にとってはいいことだらけである。
「例えばよ? ボクが誰かの家に入るとして……誰の家がいいと思う?」
一応尋ねてみた。
家の名を貶めた事は申し訳なく感じているが、何が大切かを考えれば受ける方に心が傾いている。
真っ直ぐに華琳を見据えると、秋斗の横で朔夜が服の裾をちょいちょいと引いた。
「司馬家に、入りましょう」
「朔夜のとこ?」
「はい。私の所は、姉妹が多いので不自然にはならない、はずです」
司馬家には八人の姉妹がいる。姉は桂花の部下として働いており、他の姉妹も将来文官として華琳の所に名を連ねる事が決まっている。
「司馬八達の名は、未だ私塾に通っている、姉妹達のおかげで売れています。親は気に、しませんし八が九になっても――――」
「却下よ、朔夜」
「ふぇ!?」
いきなり華琳から却下されて朔夜が素っ頓狂な声を張り上げた
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