与えられた禊名
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る。
華琳が腕の中に雛里を抱えながらの異質な状況ではあるが、華琳も秋斗も気にしない。
「そうさな……寝る時間を削っちまうのも悪い。本題に入ろう」
秋斗の目が細められる。見据える黒は知性の輝き。張りのある空気に居心地良さを感じる。
先ほどまでの緩い秋斗は何処にも居ない。
「まず一つ目。えーりんの名前、どうするつもりだ?」
一つ目から全くの予想外の質問に、華琳は少しだけ眉を寄せた。
ただ、一番驚いていたのは秋斗が華琳に会いに行くからと言ったので付いて来ただけの詠本人だった。
「ボ、ボクの名前……?」
「ああ。先に決めておくべきかなって。官渡が終わり次第……ゆえゆえよりも先にえーりんを表舞台に引き上げるから。そうだろ? 華琳」
当然、と問いかける彼の言葉に、
「ふふ、察しがいいのも変わらないのね。その通りよ」
なるほどと言った表情に変わる。
二人を見て、朔夜がまず口を開いた。
「功績による昇格と、袁家征伐による、しがらみからの解放……ではもう詠さんを動かす、おつもりですか?」
「それは華琳の判断如何による。えーりんは俺の部下じゃないからな。先にどうするつもりなのか聞いておきたいだけさ」
含んだ言い方に引っ掛かりを覚えたのは皆同じく。
「街に帰ってから正式に、と考えていたのだけれど……何か案でもあるのかしら?」
「うん。ゆえゆえは華琳の姉妹になるって言ってる。だったらえーりんもいっそ誰かの姉妹になったらどうかなって」
なんでもない事のように言って退ける彼。
彼の発言に驚いたのは雛里であった。
「しょ、しょの、待ってくだしゃいっ。月ちゃんが華琳様の姉妹になるんでしゅかっ?」
雛里はまだその件を知らなかったのだ。詠に教えられたのは帝の心情操作の為に帰還したことのみ。
思わず尋ねかけると、華琳が優しく腕に力を込めて抱きしめる。
「私が求めて、あの子が望んで決めた事よ。それについては帰ってからあの子に聞いてみなさい」
「……は、はい」
そう言われては何も言えない。また責任を背負う立場に立とうと決めた月の心を考えれば、これ以上何かを聞くのも無粋ではある。
帰ってから話そうと雛里は決めて秋斗に視線を戻した。
「……元々の姓じゃダメ?」
「俺のはただの一提案に過ぎないからな? えーりんがどうしてもってんなら本来の家名を使うのもいいと思う」
捨てた姓ではあるが、もう一度同じモノを名乗るのも可能。詠と月は確実に死んだと認識されている為に名前を変えるだけでも別人として成り立てる。詠としては元々の姓を名乗るつもりだった。
家名を受け継がせていくのならそうすればいい。血筋に重きを置いて来た大陸の在り方としても正しい……が、秋
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