与えられた禊名
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は楽しいが、少しだけ意地を張っているのも事実。先に呼ぶのが秋斗でなければ、何処か負けた気分がするのだ。
詠に肩を叩かれてうんうんと唸り始めた秋斗。
そんな彼を見てもやもやと嫉妬を浮かばせている朔夜とは対照的に、昔のような光景に胸がときめきつつも痛む雛里。
華琳の抱きしめている腕が僅かに強くなって、分かってるわと示してくれるのが少し嬉しかった。
「……じゃあ、その……今回はお疲れ様。そんでありがと、“華琳”」
悩んだ末に彼はそんな言葉を返した。頭を掻きながら目を合わせようとしない様は照れている子供のよう。
急いでお茶を啜って誤魔化しながら目を泳がせる彼に、また大きなため息を一つ。
――この落差……どうしてこうまでコロコロと切り替わるのかしら。というかいきなり素直になるんじゃないわよっ
大の大人が情けない。そんな呆れを感じつつ、唐突に真名を呼ぶ彼になんとも言えない苛立ちが増す。
無自覚の奇襲は子供のそれと同じく、労いを向けられれば普通の対応を返さざるを得ない。
何より驚くべきは、なんとなく許してもいいような気にさせられてしまったこと。
まあいい、と割り切る。このまま緩いペースで話していても本題は終わらない。
「……どういたしまして。あなたの演目、そこそこ楽しませて貰ったわ、“秋斗”」
なら自分も、と漸く真名を呼んでみた。
一寸だけ固まった彼は、負けたなぁと零してから口を開く。
「黒麒麟っぽく見えたならいいんだが……」
「どちらにしろ内情を知っている者達以外には黒麒麟としか認識されないわよ。少なくとも私に対してあそこまでふてぶてしいのは黒麒麟以外に出来ないし、まあ、及第点ね」
「落第じゃないだけマシだわな」
ずず、と互いにお茶を啜る。
こうしてゆっくり会話をするのも久しぶりだった。官渡の戦が最優先であったのだから当然だが。
椅子が足りない為に立ったままではあったが詠と朔夜もお茶を飲む。雛里は抱きしめられたままで零さないように慎重に飲んでいた。
「で? わざわざこんな直ぐに私の天幕まで尋ねて来た本題は何かしら?」
現在は麗羽に対する処罰を終えての夜半過ぎ。朝には行軍を開始して官渡に到着後、しばしの休息を取って帰還するつもりであった。
他の者は既に寝静まっている頃合いで、秋斗と雛里、朔夜に詠がこうして尋ねて来たわけだが……その意図を大まかにしか読み取れず。
――浮ついた事案では無いでしょう。私に直接、それもこんな戦の後の夜中に伝えに来るくらいなのだから……次の話で間違いない。
丁度いい。私も確認したい事があったのだから。
楽しみではあった。黒麒麟も洛陽戦後間もなくで次の手を打っていたのだ。きっと秋斗もそうなのだろう、と華琳は予測す
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