与えられた禊名
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彼の後ろに居た詠。もやもやと胸に浮かぶ嫉妬も含まれていた。
飛び跳ねた二人は急いで降りる……しかし、華琳が意地の悪い笑みを浮かべた。
「雛里、膝が寂しいわ」
「しょ、しょれは……」
懐かしい思い出だ。
黄巾の乱時代のとある日の一幕。慣れていなかった軍議で緊張をほぐすため……とは名ばかりの戯れを行ったあの一時。
朱里が華琳の毒牙に掛かって意識を失ったあの日を思い出して、雛里は顔を赤く茹で上げる。
雛里と華琳以外は首を傾げるも、華琳が何を求めているのかを読み取って、雛里がどうするのかと三人共が見つめ始めた。
きゅっと唇を引き結び、とてとてと近付いて、組んでいた脚を外した華琳の膝に、雛里はとすっと腰を下ろした。
「ふふっ、いい子ね」
「あわわ……」
ぎゅう、と抱きしめられて声が漏れた。
さすがにあの時の朱里のように楽しむ事はしなかったが、雛里を自分のモノに出来て華琳は満足気であった。
「何してんのよ?」
「見てわからない? 雛里を愛でているの。昔は邪魔が入ったけれど……今度は邪魔なんかさせないわ」
問いかける詠のきつい視線にも動じず、帽子を優しく外して机の上に置き、ゆっくりと頭を撫でつけ始めた。
ふふん、と鼻を鳴らして秋斗を見た。それで気付かぬ彼ではない。昔の自分がそういったやり取りをしていたのだと思い至る。
「あ、あにょ、あわ……あの時は緊張をほぐす為の意味合いだったはじゅで――――」
「ダメよ。また噛んでしまってるじゃない。緊張してるからそうなるのでしょう? それならこのままこうしていなければダメね」
耳元で咎められれば、ゾクゾクと変な感覚が湧く。ぶるりと震えを一つ。もう何を言っても噛んでしまいそうで、それなら話すまいと、雛里は俯いて口を噤んだ。
朔夜がその隙に、と秋斗の膝の上にまた乗ろうとするも、詠がしっかりと服を掴んでいて、思い通りに行かずにしゅんと落ち込んだ。
やっと自由になった秋斗は苦笑をどうにか抑え込んで、机の上のお茶セットから人数分のお茶を入れて行く。
「……はいよ、ゆえゆえやえーりんみたいに美味くはないだろうけど」
「ご苦労。お茶請けがないのは寂しいけれど今回は許してあげる」
「あー……すまん。お菓子の材料は真桜の工作兵に約束してた報酬で使い切ったからもう無いや」
「別に今から作れとも言わないわよ」
「そうかい。助かる」
クスリ……と、華琳は穏やかで小さな笑みを零した。雛里の頭を撫でながら。
“こんな笑い方をしただろうか”
雛里も、詠も、朔夜もそう思う。
もっと張りのある声で対応したはずで、前までの華琳ならば呆れのため息を零しているくらいだったはず。
「相変わらず変な所で気を使うのね」
「……? 気を
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