憎悪との対峙
41 降りしきる涙の雨
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ることなど全く思いつかないからだ。
別に彩斗はアイリスに危害を加えたことも、傷つけるようなことを言ったこともない。
雨は強くなり、地面や建物に振る音が聞こえるようになっていく。
「僕はミヤと君を重ねていたのかもしれない。いきなりミヤが怪我をして意識不明になって、僕の中で何か穴が空いてしまった。でもそこで偶然、君と出会って...君が僕の味方だって言ってくれた。僕の話もミヤのように真摯に聞いてくれた。だから...なんて言えばいいのか...一瞬だけど、君をミヤの代わりのように感じてしまったんだ。本当にごめん」
「ミヤさんの代わりでもいいのよ。それでも、ちゃんと私を頼ってくれた。信用してくれた。私をネットナビとしてでなく、普通の人間の女の子のように扱ってくれた。今もこうして私は自分のことを話していないのに、私の勝手な好奇心に答えてくれてる。それだけで十分」
「...そうか。ありがとう。もう少し...雨が止むまでもう少しだけ話、聞いてくれる?」
「ええ」
彩斗は少し笑顔を作ると、再びアイリスとの会話を始めた。
何気ないことや悩み、ミヤと話してないことも。
「沢城アキって本名なの?」
「いや、外の学校に行きたいって言った僕にハートレスが用意した名前だよ。面倒でカタカナで書くこともあるけど、本当は『秋』の『月』で秋月っていうらしい」
「じゃあ、休みの日は...」
「時々だけど、外出が許可されたら、メリーを連れて街に買い物に行ったりするよ。メリーは音楽も好きだし、CDショップや楽器屋とか、僕は家電量販店とかパーツ屋とか」
「やっぱり機械いじりとか好きなの?」
「うん。他にも読書や映画鑑賞とかも好きかな。あと少しダンスも。音楽はメリーがやってるのを見てるからピアノが少し」
「ダンス...バック転とかウィンドミルとかどうやって覚えるの?教えてくれる人とかいるの?」
「いや、動画サイトで覚えたんだ。昔、同じ施設にダンスが好きな子がいたんだ。仲良くなりたくてね。でも気づいたら他の施設に移ってた...」
「そうなんだ...」
「あと...集めたりするのかも好きだよ」
「集める?」
「中古の端末とか本もそうだし、腕時計とかも」
「腕時計?」
「うん。自分が生きてる時間を一緒に刻んでくれるし、気分や用途によって変えられるように。特に機械式はあのパーツの組み合わせで時間を刻んでるって思うと作った人たちの想いを感じるし、クォーツは性格で今の技術力の素晴らしさを感じることができる」
「さっきの時計...残念だったわね」
「そうだね...明日、診てもらうつもりだよ。帯磁しているなら脱磁が必要だし、クォーツな上、クロノグラフで若干複雑だから中身が壊れていたら、最悪修理できない
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