憎悪との対峙
41 降りしきる涙の雨
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い、心に溜まり吐き出せない辛いことや戦った彩斗しか分からずうまく伝えられないために隠していることがあるなら、会話を通して力になれると思っていた。
しかしそんな時、彩斗は足を止めた。
「どうしたの?」
「少し...付き合ってくれる?」
そう言ってアイリスとともに家路から外れた。
いきなりのことだった。
ことぶき町から隣の街まで歩き始める。
「どうかしたの?」
「いや、何か僕に話したいことがあるんじゃないかってね」
「...シンクロ?」
「そうだね、ごめん、別に覗こうと思ったわけじゃないんだ。それに僕も君と話したいことがあったし。だから少し歩きながら話そうと思って」
「私と話したいこと?」
アイリスは彩斗も自分と話したいことがあると知り、頭の中で疑問符を自分に投げかけた。
自分のこと、カーネルのこと、何を話そうとしているのか考える。
確かにアイリスが彩斗をよく知らないように、彩斗もアイリスのことをよく知らないのだ。
だがゆっくりとした歩調の中で彩斗はアイリスの方を向いて、開いた口から出てきたのは疑問ではなかった。
「ありがとう」
「え?」
「君がいなかったら今頃、メリーは殺戮マシーンに成り果てていたかもしれない。それに僕を今、ここにいるのは君のおかげだ。本当にありがとう」
「そんな...当然よ...その前に消える寸前だった私を助けてれたじゃない」
「別に僕は見返りを求めてたわけじゃないよ。それに本当に感謝してる」
「私...感謝されてる...?本当は罪滅ぼしのつもりだったのに...私ね、昔...」
「言いたくないなら言わなくていいよ」
アイリスは今まで感謝されたことが殆ど無かった。
今まで生きてきた中で救った命よりも奪ってきた命の方が圧倒的に多い。
いくら償っても償い切れない程に。
かつて自らの優れたコントロール能力を利用して、軍の命令に従って言われるままに人を殺し続けた自分には感謝される資格など無いと思っていた。
だが心の何処かでは嬉しく思ってしまう。
そして同時に自分は語らないのに、彩斗のことを知ろうとする自分はずるいのではないかと思えてしまう。
「でも私は自分のことを話さなくていいと言われても、サイトくん...あなたのことは知りたいって思う...フェアじゃないけど...」
「いいさ、別に。何から話そうか?」
「じゃあ...サイトくんはいつから...あの施設に?」
「物心ついた時から...かな?僕もよく覚えてないんだ。小さい時の記憶は途切れ途切れで...」
「施設ではどんな暮らしだった?家族は?」
「家族...分かんない。でも施設での生活に慣れていくと、施設のみんなが家族のように思えてくる
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