暁 〜小説投稿サイト〜
流星のロックマン STARDUST BEGINS
憎悪との対峙
41 降りしきる涙の雨
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メリーにはある程度の医療分野や電子分野に関する知識がある。
もしこの情報が見られれば、彩斗の身体のことを感づかれるかもしれないと考えたのだ。

「アイリスと出てるわ」
「...無事なの?」
「えっ...ええ。あなたより先に回復してピンピンしているわよ」

ゆっくりとハートレスの方に歩きながら、低い声で問い掛けるメリーの姿は何処か恐ろしげな雰囲気を漂わせていた。
いつもの誰にでも使っているはずの敬語も使っていない。
そして何かの糸が切れたように歩く速さが上がり、ハートレスの胸に飛び込んだ。

「!?ちょっと...何よ?」
「怖かった...」
「え?」
「何でもない...私...」

突然のことに驚くハートレスだったが、胸の辺りに熱く濡れる感覚とメリーの声から徐々に状況を把握していく。
メリーはハートレスの胸の中で泣き始めたのだ。
胸の感覚はメリーの涙がハートレスの服に染み込んでいく感覚だった。
今まで聞いたことの無いような弱々しくもよく通る声で自分の心を表現しようと言葉を発していた。
確かにいくらネットナビといえど元は10歳になったかも分からないような人間の少女だ。
2日間もダークチップによる悪夢に冒され、いつ殺されるかも分からないような環境に置かれていたのだ。
至って普通のことだ。

「変?...ネットナビなのに...私...」
「怖かったのね...いいのよ、それで」

ハートレスは今までの自分がメリーに与えてきた私情に左右されず、実験動物を扱うような態度の冷たい人間という印象が壊れることを覚悟した上でメリーを力いっぱいに抱きしめた。
これからメリーにどう思われようと、他の『ロキの子』たちに本当は甘い人間だと流布されようと全く恐れることはなかった。
それどころかハートレスの中では、今まで仕事に挟んだことの無い私情であるはずの怒りと憎悪が沸き上がっていた。

























家から出て約50メートル程歩いただろうか。
閑静なマンション街でデンサンシティでありがながら、時折ハートレスのセーフハウスのような高級住宅が見受けられた。
アイリスは隣で歩く彩斗の様子を眺めていた。
今思えば彩斗と出会った夜から「普通の彩斗」というものを見たことが無かった。
そのためアイリス自身も彩斗のことをよく知らないのだ。
本来なら彩斗も出会ったばかりの自分のことを知ろうとする者は誰であろうと気味が悪いと思うだろう。
しかし自然と何か惹かれるものがあった。
その美しい中性的な容姿からだけではない。
優しく儚げでガラス細工のような心を持った彩斗が壊れてしまうので
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