憎悪との対峙
41 降りしきる涙の雨
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。
彩斗は戦闘中、痛みを感じていなかったのだ。
だから痛みで怯むこともなく、ただ目的に向かって戦うことが出来た。
しかしそれを話している時の彩斗の顔はまるで世捨て人さながらの表情だった。
確かに防御をすれば相手に攻撃の主導権を握られるし、隙が生まれる。
反面、防御をしないということは、相打ち、下手をすれば防御した時よりも隙が生まれかねない。
しかし痛みを感じないということは、それらのデメリットを打ち消した。
一方的に攻撃の主導権を握り、スターダストの驚異的な戦闘能力と合わせれば、あの映像のような怪物になってしまうわけだ。
アイリスはまるで彩斗が死に引き寄せられているように思った。
それどころか、戦っても戦わなくても、死が自分に迫っているのを感じているのでないとすら思えた。
「まるでサイトくん...自分が死ぬのを...分かっているみたい」
「ふっ、まさか!僕はシンクロナイザーでも予言者じゃないんだから。過去と現在のこと以外は分からないさ」
「そうだよね...」
「...でもね、もしかしたら長くはないのかもしれない。そんな気はする...」
彩斗はアイリスの言葉に笑いまじりで答えたが、最後に確信は無いがそんなことを呟いた。
今のところ死に至るような激痛や苦しさは感じられない。
だが何故かすぐそこまで死がやって来ているような予感がした。
アイリスは一度、彩斗から目を逸らし、雨の降りしきる公園の遊具の方を見てから、再び口を開いた。
「怖く..なかったの?」
「え?」
「あんな銃を持ってる上、訓練を受けて、今まで何人も殺してきたような人たちに...平気で立ち向かえるわけない...メリーさんが大切だったのは分かる。でもね、映像を見ている限り、全く怖がってるように見えなかったの...」
その時、彩斗の顔は今までアイリスが見たことが無いような表情に変わった。
今まで少し疲れた顔で笑顔を作っているような状態だったが、ゆっくりと下を向き、唇を噛みながら今にも泣きそうな表情だった。
声色も幼さの残る声ながら、弱々しく力の抜けた声へと変わる。
その瞬間、今まで彩斗を必死で平静たらしめていたものが崩れ、歳相応の不安定な心がむき出しになったのがアイリスには見て取れた。
「怖かったさ...とっても...とっても...」
彩斗は必死に涙を堪えているようだったが、殆ど泣いているも同然だった。
アイリスは椅子から立つと、テーブルの反対側の彩斗の隣で膝立ちになり、彩斗の背中を擦る。
「あんな銃を平気撃ちまくって、僕より何十倍もの人間を殺した血も涙もない正真正銘の人殺しを相手にして...怖くて怖くて逃げ出したかったさ...でもね、さっきの身体と同じだっ
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