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無欠の刃
下忍編
ヒナタ
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あまり気分がよくない。少なくとも、山中に向ける感情と同じくらいには、苦手だ。
 ヒナタはもじもじとしていたが、やがてカトナに向かって淡い笑みを浮かべる。

「私は、大丈夫だよ」
「そう」

 沈黙。シノとキバが気まずげに視線を交し合う。
 ヒナタとカトナはお世辞にも仲がいいとは言えないし、シノもキバもカトナとは仲が良くない。
 というのも、シノもキバも一方的に、カトナのことをライバル視しているからである。
 カトナはアカデミーの中でも、特に有名どころであり、同級生の間ではある意味、憧れの対象であり、同時にさきをいくものでもあったのだ。
 だからこそ、カトナを負かすことは、同期のアカデミー生徒にとっては、超えなければいけない目的であるといってもいい。
 そのためか。あまり彼らはカトナと話したことが無い。ので、今の沈黙は気まずいだけであって。
 しかし、カトナと言えば、最早ヒナタには興味がないと言わんばかりに、さっさと去ろうとして。

 「ありがとう、カトナ君」

 その言葉に、カトナは何を言っているんだというような目を向ける。
 私がここに来たのは、ナルトの為であって、お前の為では死んでもない。本当はこんなところ来る気もなかったけれども、どうしてもと頼まれたからだ。それ以外の理由はない。
 そう、ありありと告げる彼女の瞳に、ヒナタは臆することなく笑った。
 きれいに、笑った。

 「ありがとう」

 しばしの沈黙の後、カトナは勢いよく部屋の外に飛び出る。
 ばんっと勢いよくしめられた扉に、キバが怒ったような声をあげたのをとらえながらも、カトナは振り向かず急ぎ足で歩いていく。
 その頬は、サスケやナルトでないと見抜けないほど僅かに、赤い。
 言われ慣れていないお礼に、向けられるはずのないお礼に、舌打ちを一つ飛ばし、立ち止まる。
 振り返って、カトナは誰もいないことを何度も確認し、廊下で一人、聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな声で呟いた。

 「どう、いたし、まして」

 反響した音は、きっと彼女には届いていなかった。

・・・・

 「…まずは、術の構成」

 カトナにはチャクラが圧倒的に足りない。必然、大技ではなく小技を多用する戦法が多い。
 しかし、いまのカトナには少しずつでもいいから、大技を使えるようにならないといけない。
 ぎりっと、歯を噛みしめ、あの姿を思い返す。
 今からでも殺してしまいたくなるほどの憎悪が、彼女の体内に渦巻く。
 大蛇丸。今のカトナが殺すには到底無理な相手。それでも、殺してしまいたくなるほどに憎い奴。
 サスケを狙うという彼の言葉は、カトナの中でずるずると、まるで蛇のように全身を這いずりまわる。

 「ナルトは…絶対に、傷付け、させない」

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