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鎧虫戦記-バグレイダース-
第25.5話 憎しみの記憶
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か。


奪われなければ分からない。
奪ってやらねば分からない。


私の頭の中に囁くようにこの言葉が響き渡った。

「キャッ!」

 ドシャッ!

声からして少女だろうか。後ろを振り向くと
彼女の周りには、大量の荷物が散乱していた。
とても一人で運べるような量ではなかった。

「おいッ!そこのガキ!甘えてんじゃねぇぞ!
 ここは弱肉強食の世界なんだよ!
 弱者は這いつくばり、強者はのし上がって行く。
 こういう風に世界はできてるんだよッ!!」

 ヒュオッ!

そして、風を切る音が聞こえてきた。


 バシィィィィィンッ!!


鞭打の音、そして少しの沈黙が響き渡った。


少女の身体を男が庇い、その背に鞭を受けたのだ。
飛び散った鮮血は砂に吸われていった。

「テメェ‥‥何してやがるッ!!」

高貴な男は声に怒りを込めて叫んだ。


そこには私が立っていたのだ。
それには、私自身が驚いた。


斜めに走った赤く割れた傷は私が立ち上がる内に
ぐじゅぐじゅと音を立てながら塞がっていった。

私は男の全身を見回した。
身体は万遍なく脂肪に覆われていた。
何もしていないのに息が上がっているように見える。

私は先程に叩かれた男や少女の方を見た。
全身が引き締まっていた。栄養不足の為に
やせ細ってはいるが、貴族の男たちに比べれば
はるかに鍛えられていた。

弱肉強食。弱い者の肉を強い者が食うと書く。
この場合はどちらが弱者だろうか?
餌を与えられていない獣と毎日たらふく食っている人間。

「さっき言いましたよね?弱肉強食って」

私は男にそう問い立てた。

「あぁ、そうだよ!分かったらさっさと持ち場に戻れ!!」

男はそう言って鞭を振り上げた。
私はその前に近寄り、男の上げている腕の方の肩に触った。

 ゴキンッ ブチッ!

肩の骨が外れる音の後に、腕がまるで紙のようにもげた。
鎖を引きちぎる時の応用でやってみたが、ここまで脆いとは。


人間の肉体は(ヒトノカラダハ)


「あ、ああ、あひぇああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああッ!!!」

男は声にならない叫び声を上げながら、砂の上をのたうち回った。

「大丈夫ですか?とても辛そうですが」

そう言って、私はもう片方の肩に手をやった。

 ゴキンッ ブチッ!

さっきの要領でもう片方の腕がもげた。
だが、鎖の時とは違い、楽しさは全く感じなかった。

「あがああぁぁァァァぁぁあああひぃィィぃぃィィぃぃぃイイイイッ!!!」

この男がうるさいからだろうか?

「奴隷仲間から聞いたんです。右が痛い時は左を叩けって。
 
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