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義勇兵
2部分:第二章
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第二章

「そうでした」
「階級は大尉です」
 その将校劉は自分の階級も述べてきた。ここで少し悪戯っぽい動作で敬礼もしてみせてきた。
「あらためて宜しく御願いします」
「はい、こちらこそ」
 スコットも敬礼で返す。そのうえで夜の滑走路の端でだ。二人で話すのであった。
 話すのは当然戦いのことだ。スコットは日本軍のパイロットについて話した。それはアメリカから来た仲間達と同じ内容であった。
「日本軍は強いですね」
「ええ、あの強さは桁外れです」
 劉は少し苦い顔で述べた。
「全く以て」
「はい、どうやらかなり激しい戦いになりそうですね」
「我々もこれまでかなりやられてきています」
 劉の顔がさらに苦いものになる。
「それで今こうしてここまで追い詰められています」
「左様ですか」
「しかしそれでもです」
 劉はここでだ。スコットの顔を見て述べた。
「貴方達が来てくれましたから」
「我々がですか」
「頼りにしています。そして」
「そして?」
「我々も意地を見せますよ」
 ここでは笑顔になった。そのうえでの言葉だった。
「中国人の意地を」
「意地をですか」
「これでも中国はこうした試練を幾度も経験しています」
「長い歴史の中で、ですね」
「しかし今も生きています。ですから」
「戦いますか」
「最後の最後まで戦います」
 こう話すのだった。
「何があろうとも」
「そうですか。では我々も」
「貴方達もですか」
「共に戦わさせてもらいます」
 劉への言葉である。
「是非共」
「だからここにおられるのですね」
「はい」
 劉の今の言葉にもこくりと頷く。
「その通りです」
「では。これからも」
「宜しく御願いします」
 スコットからだった。右手を差し出したのだった。
「どうか」
「ええ、こちらこそ」
 劉は微笑んでだった。彼も右手を出した。
 そうしてそのうえで握手をし合いだ。また言い合う。
「共に戦いましょう」
「中国の為に」
 笑顔で言い合うのだった。そして日本軍の基地ではだ。眉が吊り上がった厳しい顔の小柄な男がだ。威勢のいい声でこう言っていた。
「アメ公が来たら来たらでいい」
「来たらその時はか」
「どうするんだ?」
「見敵必殺だ」
 日本軍人に相応しい言葉であった。
「それ以外に何がある」
「そうだな」
「それしかないな」
 同僚達もだ。その彼の言葉に頷く。今彼等は下は軍服のズボンだが上はシャツだけだった。そのうえで粗末な隊舎の中で話していた。
「やっぱりな」
「戦うしかない」
「どんな敵でも」
「ここで負ければ後がない」
 彼はまた言った。
「そう思って常に戦う。それだけだ」
「話は聞いた」
 その彼の後ろからだ。声がしてきた。
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