【魔界】での戦い U
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前代未聞の大災害に襲われる東京の夜を、いくつかの影が駆ける。
ビルを駆け上がり、屋上から屋上へと跳躍しながら、それらの影は火花を散らしていた。
「クッ・・・!私がこうすることはお見通しだったのか・・・!不意打ちで一人も倒せないとは・・・!」
その内の一人が、ビルの上で止まりながら呟いた。苦々しげな顔をする彼女は、リリアナ・クラニチャール。【剣の妖精】とも呼ばれる、【青銅黒十字】の幹部の一人であった。
ガチャガチャ。
鎧を鳴らしながら、彼女を影が囲む。その数は二十ほど。男女入り混じったその集団の人間からは、一切の生気を感じない。
彼らは、ヴォバン侯爵の権能によって魂を捉えられた、過去の大騎士たちであった。
生前は、暴君であったヴォバン侯爵に戦いを挑むほどの勇者たちだったのだろう。しかし、その魂を牢獄へと捉えられた今となっては、生前の輝きなど見る影もない。ヴォバン侯爵の哀れな操り人形。それが、今の彼らだった。
さて、そんなヴォバン侯爵の奴隷とリリアナは、何故対峙しているのだろうか?
「騎士として、これ以上の狼藉を見逃す訳にはいかない。貴方たちには悪いが、ここで止まってもらおう。」
彼女は、手に持った剣を構える。既に幾度となく剣を交わらせていたので、敵の技量はある程度把握している。
(思考能力が低下している。咄嗟の判断に弱いな。本当は最初の攻撃で数を減らしたかったが・・・しかしこれなら、私でも時間稼ぎくらいは出来る)
ヴォバン侯爵の権能【死せる従僕の檻】は、強者に対してほぼ無意味だ。せいぜい大騎士程度の力量しかないリリアナでも、二十人以上を相手にして未だに余裕がある。技量などは生前と変わりないようだが、思考能力の低下が、彼らの実力を大幅に下げてしまっているのだ。
その為、この権能は人海戦術を取りたい場合や、ヴォバン侯爵には使用できない魔女の術などを使わせる為に使用されていた。
なら、今回は何の為に動いているのだろうか?それは、誘拐であった。
裏の世界では有名な、ヴォバン侯爵の起こした事件。まつろわぬ神召喚の儀式を、もう一度するのだと彼女は教えられていた。そのために、質の高い巫女を必要としていたのだ。
この国で・・・否、世界でも最高位の巫女である万里谷 祐理。彼女を誘拐してこいというのが、リリアナに課せられた使命であった。その為に、配下である従僕をお供に付けられていたのだ。とはいえ実際は、リリアナが裏切ることを予想した監視役だったようだが。
しかし、である。
(いくらヴォバン侯爵といえども無謀すぎる・・・!)
つい先日、件の彼女は【混沌の王】草薙護堂の眷属として生まれ変わった。それは、【賢人議会】によ
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