8部分:第八章
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第八章
「それどころか穏やかでな」
「にこにことしていてな」
「へえ、あの日本人がかい」
これにはゴーも驚いた。実は彼も子供の頃日本軍の鉄拳制裁を受けているのである。彼等の恐ろしいところは誰であろうが殴ることであった。そうした意味においても公平であった。
「殴らないのかい」
「それに公平で気前がいいのは相変わらずでね」
「いや、気前のよさは相当なものになったよな」
「だよなあ」
彼等はこのことを素直に喜んでいた。
「いや、よく来てくれたよ」
「全くだよ」
彼等はそんな日本人のことを素直に喜んでいた。ゴーも彼等の話を聞いて目を細めさせていた。しかしここで、であった。
「そうか。日本人か」
「んっ!?」
「どうしたんだい?」
「いやな」
反応を見せた村人達に対して答えるのだった。
「ちょっと人を探したいんだけれどな」
「人をかい」
「日本人でな」
彼等だというのである。
「探したい人がいるんだけれどな」
「日本人に知り合いがいるのかい?」
「また随分珍しい話だね」
村人達は今のゴーの言葉を聞いてその目を少し丸くさせた。
「四十数年は来ていない人達なのに」
「それでもかい」
「まあな。それで何処にいるんだい?」
あらためて彼等に問うのだった。今はまだ緑の雑草が整然と並んでいるだけに見えるその水田の中にいる彼等を見ながらの問いだった。
「日本の人達は」
「ああ、そこにいるさ」
「皆で教えてくれているよ」
「そうか、皆でかい」
それを聞いてさらに思うゴーだった。
「皆っていうのならな」
「何だよ」
「日本人に会いたいのか?」
「ちょっとな」
こう懐かしい彼等に答えるのだった。
「行って来る」
「何かよくわからないけれどな」
「とりあえず会いたいのなら行けばいいさ」
「そうだよな」
彼等も特に反対しなかった。これで決まりだった。
ゴーは日本人達の方に行った。そうしてだった。彼はその以下にも真面目で善良そうな彼等に対してすぐに尋ねたのだった。
「あの」
「あっ、はい」
「何ですか?」
彼等はすぐにゴーの言葉に応えた。
「何かあったのですか?」
「問題でも」
「問題はないです」
そうではないというのだ。
「ただ。人を探していまして」
「人ですか」
「といいますと?」
「ええと。名前はですね」
ここでその名前を思い出すのだった。まずはそれからだった。
「小山田さんだったかな」
「小山田さんですか」
「はい、下の名前はもっとはっきり覚えています」
これははっきりと覚えているのだった。
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