2部分:第二章
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第二章
「それでわし等は銃を手に取ったのじゃよ」
「そうだったのか」
「それから戦うようになったのじゃな」
「そうじゃよ。そして」
老人はまた言うのだった。
「一緒に田んぼを植えてもくれたのじゃ」
「田んぼ?」
「兵隊さんが田んぼを植えるのかよ」
「その話をしようかのう」
こう話してだった。そうしてそのうえで。爺さんは戦争を知らない若者達に話すのだった。
その頃日本軍は仏印、インドシナ半島に進駐してきた。その中にはベトナムも入っていた。彼等はそこに入るといつもの如くやたらとスローガンを出してきた。
「ええと、意味がわかるか?」
「わからないよな」
ベトナムの子供達は日本軍の言うことに首を傾げさせるばかりであった。
「結局何が言いたいんだろうな」
「日本語って難しいみたいだな」
「それに」
ここで自分達の村にも来ている日本軍を見る。刈り入れ前の緑から黄金になろうとしているその田園の道を行進して歩いている。それがまたやけに物々しかった。
「怖いよな」
「なあ」
皆その日本軍を見て話す。
「近寄りたくないよな」
「うちの兄ちゃん昨日いきなり殴られたぞ」
一人がこんな話をした。
「何か行儀が悪いとかっていう理由でな」
「えっ、いきなりかよ」
「殴るのかよ」
「ああ、殴ったんだよ」
この話もされた。日本軍は鉄拳制裁が常でありそれはベトナムにおいても同じであった。これは何処でもしていたのである。
「とにかくな。怖いなんてものじゃないからな」
「あの人達の前では滅多なことできないんだな」
「ああ。大人しくしておこうぜ」
「そんな人達かあ」
ゴーは皆の話を聞きながら日本軍を見た。その物々しい行進をだ。
「怖いのか。俺も注意しないとな」
「ああ、あれは本当に怖いからな」
「何されるかわからないぜ」
その皆がゴーに対して話す。とにかく誰もが日本軍を見て最初に抱いた感情は怖れであった。
確かに日本軍は怖かった。しかしであった。彼等は生真面目であり規律正しくそのうえ公平で熱心であった。皆そのことをすぐに察したのである。
子供達に対しても普段は公平であった。少し見れば無闇に殴ることはなかった。
むしろお菓子や果物をくれる有り難い存在であった。そして悪いこともしなかった。
「あれっ、案外親切だよな」
「そうだよな」
皆日本軍から貰ったそのお菓子を食べながら田んぼのほとりで話した。
「最初は滅茶苦茶怖かったけれどな」
「もの取ったりしないしな」
「全然な」
日本軍の前のフランス軍といえばそうしたことをするのが普通だった。しかし彼等はそれをしなかった。それも一切であった。
「おまけに何かっていうと動いてくれるし」
「親切だよな」
「いい人達なのかな」
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