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SAO−銀ノ月−
第七十四話
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からクナイを取りだそうとするも、そこには何の感覚もない。……弾切れだ。素早く切り替えた日本刀《銀ノ月》による抜刀術で、先行してきた一体を切り裂き、こちらに向かってくる一団には刀身を発射する。……もちろん、焼け石に水にしかすぎないが。

「ユイ、これを使えるか!」

 そう言ってキリトが取り出したのは、世界樹の外層部で見つけたカードキー。そのアスナからの贈り物に、ユイは何らかの希望を見いだしたのか、「コードを転写します!」とそのカードを触ると、光が彼女に向けて流れ込む。

「このっ!」

 しかし、俺にそれを悠長に観察する余裕はなく、遂に接近してきた守護戦士たちと接敵する。もうMPもないためカマイタチも使えず――さっき使ったことを後悔する――ユイの邪魔はさせない、と気迫を込めて《銀ノ月》を構える。

 だが、俺は守護戦士たちと接敵することはなかった。下層部より放たれた光や炎――それらに守護戦士たちは飲み込まれていき、俺の前から姿を消していたからだ。

「転送されます! ショウキさん!」

 何が起きたのか。それを確かめる暇もなく――いや、確かめるまでもないか。最後まで放たれ続けた支援に感謝しながら、ユイから呼びかけられて彼女の小さな手に触れると、俺たちの意識は白い光に包まれていく。

 もはや懐かしい転移の感覚――そう考えているとまもなく、別の場所に降り立った感触が足に感じられた。空中都市とやらに到着したのだろうか……門が開かないようになっていた以上、あるかどうか、もう眉唾物だが。

「パパ、ショウキさん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ……ここは?」

「あ、ああ……」

 三者三様に混乱から持ち直すと、片膝をついた態勢から立て直し、まずは回復した視界で周囲を見直した。そこは妖精たちが自由気ままに飛び回る、美しい空中都市などではなく。

「病室? 研究室……?」

 その無機質な白色の壁紙に包まれた空間は、俺の第一印象をそう決定づけることは容易だった。ユイの答えも「位置は特定出来ません……」と、少なくともここは妖精王が住まう空中都市ではない。

「アスナ……ママの反応は、あるか?」

「はい。こっちです……」

 ユイの誘導に従って白い廊下を歩いていくと、いつしかエレベーターのような物に突き当たる。その妖精たちの世界に似つかわしくない、機械的なシステムに、ここはゲームではなく現実だったか……と、一時錯覚するが、腰に下げられた日本刀《銀ノ月》の重みでその考えを振り切った。

「ないじゃないか……空中都市なんて……!」

 少なからず披露の色が感じられるキリトのその声と同時、現実では慣れ親しんだ『ピンポーン』という、ミスマッチなエレベーターの到着音が鳴り、俺たちはさらに上に昇っていく
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