エピソード29 〜万丈目去る〜
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俯き、両の拳を強く握っていると頭に腕が回され、抱きしめられる。それと同時にふんわりとした甘く心地よい香りが漂う。
「っ!?な、何を……」
反射的に逃れそうとするが抱きしめる力が強くなる。そして、翠さんはどこか遠くを見ながら呟く。
「……失うって辛いよね。私たちもそうだったから……。」
私たち……って?この人に何があったんだ。などと思っていると腕から解放され、今度は肩を掴まれ、目線を合わせられる。翠さんを至近距離で見てしまい、思わずドキッとする。明日香さんとはまた違う……これが大人の色気と言うやつかなどと不謹慎にも思ってしまう。
「一度、どん底を味わった人が再び這い上がった時、その時人は何倍にも成長できる。けど、その道は険しい。もし、君が再び這い上がろうという気持ちが確かなら私は応援するよ?」
「っ!当たり前だ!俺は……絶対に今よりも強くなってあいつらを見返してやるんだ!」
決意表明とも取れるその言葉を聞くと翠さんはデッキからカードを一枚抜き取り、こちらに投げ渡す。
「『下剋上の首飾り』?なぜ?」
「応援するって言っても今は何もしてあげられないからね。それは君の旅路のお守り代わりかな?それに下剋上、どん底から這い上がり、力をつけ、リベンジする。今の君にぴったりだと思うよ。」
本来の意味は下の者が上の者に打ち勝ち、地位を手にする事。
落ちこぼれのレッドに負けた俺はソレ以下ということか。面白い、下剋上でも革命でもやってやる。
「それに……私の弟は強いよ。」
意気込む俺を見た翠さんは一言だけ言う。
「えぇ。だが、這い上がった暁には、あいつもぶっ倒す。」
そう言うと翠さんはやってみろと小さく笑う。
「さて、俺はもう行きます。そして、絶対に強くなってみせる!」
「頑張ってね。」
ただ一言応援の言葉を受け、船へと乗り込み島を出る。
今にみてろよ、お前ら。俺は今の何倍も強くなって戻ってきてやる!そして、俺様につけてくれた黒星を返上してやる!
◆◇◆
side翠
「行っちゃったか……。」
遥か遠くで船首で水平線に向かって高笑いする万丈目を見ながら、ポツリと呟く。少し寂しさ半分、ちょうどデッキが面白い半分で作ったバニラ天使でよかったと思っていた。じゃなきゃ、『下剋上の首飾り』なんて使わないし……。
『翠〜。あんたが紫苑以外にあそこまで入れ込むなんて珍しいね〜。』
「そうかな?まぁ、けど、あの子が昔の紫苑に重なったからかな〜。」
私よりも一年遅くプロデュエリストとなり、ガムシャラに頑張っていた頃の弟の姿が思い出される。
『まぁ、けど、なかなか見込みのありそうな子だね。それに精霊と交信する素質があるね。』
「へー、そ
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