冒険者
アリ穴四階 part2
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
カラーン───
大きめの広場にある岩場の陰、アレンの手よりこぼれ落ちたグレートソードが地面に転がり乾いた音をたてる。
「握力の限界を超えておったか」
見ればアレンの両手の指がつり上がり痙攣を起こしているのが見える。
顔には苦悶の表情が浮かび痛みに堪えていた。
「大変!グレーターヒール!」
アーニャが駆け寄りその両の手を自らの手で優しく包み込み癒していく。
「緊張の糸が切れたんじゃろう。あの闘いでは無理もない。よくやった」
アーニャのヒールによって痛みは退いたが疲労により座り込むアレンを労った後、ガンド、ウォレスも武器を立て掛け腰を降ろす。
武器を落とすことのなかった二人だが流石にその疲労は見てとれる。
「アーニャ、ありがとう」
アレンの顔から苦悶が抜けたのを見てとったアーニャは安堵し、次にサミエルと目線を交わす。
「アーニャさん、後で頼みます」
サミエルの一言で覚ったアーニャは頷くとサミエルに向け杖を構えた。
「ヒールオール」
サミエルを中心に半径3m程の魔方陣が展開され、顔色が突然悪くなったかと思うと同時にメンバー全員の疲労が軽減された。
ヒールオールは術者を除いたパーティーメンバー全員の回復をすることができるが術者の体力を奪ってしまう欠点がある。
乱戦でヒールオールを使いパーティーメンバーを守ったあと敵の攻撃をくらい命を落としたウィザードは決して珍しくない。
体力の低いウィザードの疲労感は前衛職にはわからないだろう。
使いどころの難しいヒール魔法ではあるが安全地帯での使用に関しては魔力効率が良い為使われることが多い。
アーニャに後で回復を頼んだのはヒールオールを使うのは自分だという先手を打つためであり、女性に疲労させる訳にはいかないという紳士的な考えがサミエルにあってのことだろう。
「もっかいいくからその後にお願い。ヒールオール」
アーニャの返答を待つことなく唱えられた魔法はメンバーの傷を癒し体力を殆ど回復させることができた。
「グレーターヒール」
「アーニャさんありがとう。お陰で楽になったよ」
アーニャの魔法により回復したサミエルはお礼を言うとその場に座り込む。
魔力回復促進のためメディテーションを唱え、更にブルーポーションで回復量を底上げするとアーニャとサミエルは瞑想に入った。
ガンドとウォレスは帰還するかどうかを相談している。
“帰還する“というのはこの場合帰還スクロールを使って地上へ出るかどうかということだ。
「その場合、他の奴等にこの事を報せるのが遅くなるが仕方ないか」
昨夜の情報交換で大アリだけの集団がいるというものはなかった。
尤も今日出会っている可能性は大いにあるが早目に報せたい。
犠牲者が出
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ