ラジエル
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ンが精神的にまいって、また号泣してしまった。
「……とりあえずまとめると、ここ最近の記憶は全く思い出せず、過去も結構穴だらけ。だが部分的に覚えている事はあり、最も強く残っている記憶は両親に家を追い出される時。自分が魔女である事と、“星読み”の使い方、何か旅をしていた感覚などは残っている、と」
要するに俺やエレンと出会ったこの旅の出来事をほとんど忘れてしまったわけだ。あと、過去に受けた誹謗中傷や故郷の思い出なども忘れている。ある意味無垢な状態となった訳だが……この旅で心に刻んだ記憶はほんの僅かに残っているらしい。
ハーブティーを飲んで一息つき、俺は行く宛ての無い彼女をこれからどうしようかと考えた。記憶があっても無くても俺が帰る場所に、彼女を連れて行くわけにはいかないのが少々複雑だ。
「そうですか……魔女の力が暴走して記憶が……。帰るところも無いし、うち……これからどうすれば……」
「あんた、ザジやったか。行く当てが無いんやったらここに住まわせたる。せっかく助けたのに野垂れ死になんかされとうないわ」
「あ、ありがとうございます! お世話になります、師匠!」
「師匠? あ〜師匠なぁ、悪くない響きや」
「……確かに伝説の魔女と言われるひまわり娘の下なら、魔女の力も制御できるように鍛えられるし、庇護を受ける対象としても文句が無い。少々歳が離れすぎてはいるが……」
瞬間、俺の背後から凄まじい殺気が襲い、背筋にゾッとする冷気が走った。『ゴゴゴゴ……』と擬音が聞こえてきそうなオーラを発生させて、彼女……ひまわり娘はにっこりと昏い笑みを浮かべながら俺の肩を掴んできた。
「おいアンタ……女に年齢の話すんな。シメるで?」
「さっき自分で娘って呼ばれる歳でもないって言ってたじゃないか!?」
「社交辞令やってことぐらい察さんか、クソガキ。……しばくで?」
あまりの殺気ゆえに硬直していると肩を掴む力が徐々に強くなっていき、骨がミシミシ言い始めた。正直、転がりたくなるぐらい凄まじく痛い。しかし金縛りにあったかのように身体は動かない。
「ッ!? わ、悪かった……俺が悪かった! 肝に命じる!」
「本当にわかっとんのか? 男から女に年齢の話をするのはタブーやってことを……?」
「わかってる! もう二度と言わない!」
「ふん。わかればいいんや、わかれば」
辛うじて動いた口で謝罪すると、肩にかかっていた万力じみた圧迫感が和らぎ、圧倒的殺気から解放された。ごく短時間の出来事なのに、解放された俺の身体にはおびただしい汗が流れていた。
「もう女性は怒らせないようにしよう……」
「賢明な判断ね」
殺気の巻き添えを受けて血の気が引いたエレンが同意して頷いた。一人きょとんとしているザジ
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