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リリなのinボクらの太陽サーガ
神秘
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……興味深い光景だな」

恐らく吸血変異によって枯れて空洞となった大樹の中で、未だに水を送る機能が残っていて湧き水として作られた清らかな泉、その周りから新たな木々の苗がしっかり根を張っていた。既に大樹の上の方は折れて空洞に太陽の光が直接入り込むようになっており、新世代の木々はその眩い光に向かって一直線に力強く伸びる、躍動感のある光景……。

「こんな神秘的な場所がすぐ近くにあったなんて……! 『神秘の森』の由来はここからなのかもしれないね!」

「そうだな……何より驚くべきなのはこの湧き水だ。吸血変異の源であるダークマターが降り注ぐ外世界に野ざらしなのに、一切暗黒物質に汚染されていないんだ」

「内陸に降る雨は汚染されてて飲めないのに、ここは自然の力で浄化してるんだ……!」

「……世界にアンデッドが現れようと、種の滅びが目前に迫ろうと、生きようとする力はかくあるものなのか……」

「うちも……この子達みたいに、闇に負けず生きなきゃいけないと教えられたよ……」

彼女が感動で心を包んでいる間に、俺は泉の傍の地面に刺さっていた一本の爪を見つける。アース属性が内包されているこれが、探していた『地竜の爪』のようだ。

「…………」

拾ったそれを荷物にしまいながら、俺は思う。
クイーンの命令でこういう物を集める……人類の敵たるヴァンパイアの計画を進めるための旅に、果たして人間の彼女をこのまま連れて行っても良いものなのか? ……まあ、内密に俺自身の策も進めているから正確には違うのかもしれないが……それでも先程のような変異体と戦う可能性が高く、危険である事には変わりない。少なくとも暗黒城に戻るまでには別れないといけないが……魔女である彼女が平穏にいられる場所を見つけたら、その時は……。

「それが『地竜の爪』? じゃあまず一つ目だね!」

「あ? ああ……そうだな」

「サバタってなんか暗いなぁ〜、もっと明るくいこうよ! 上向いて行かないとね!」

「俺はともかく、おまえはそれでいいさ……」

逆境に立ち向かう支えを得られたのなら、それはそれで構わない。それに彼女の旅も彼女が安息の場所を見つけるまで、一人では対処できない危険から俺が守っていればいいだけか。ま、同行者がいるというのも案外悪くない。

「ここの用事は果たした、次の探し物を見つけに行くぞ」

「は〜い! 次の目的地はうち、“星読みのザジ”さんにお任せあれ〜! ……読めたっ! ここより遥か西、海に面した街の北にある遺跡……そこに探し物があるよ!」

「西の海沿いの街……確か近くまでなら使われなくなった線路が通っていたはずだ。となるとまずは線路沿いに進むのが吉か……」

「線路って、旧世界だと“デンシャ”って乗り物がすっごい速さで走ってた
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