神秘
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ァンパイアでもない、同じ人間なのに魔女というだけで蔑まれる……異端を嫌う人間の歪な性質を実感できるな。
「太陽樹の恩恵を受ける街だからか、太陽の果実が多いな、やはり……」
だが“星読み”の事も考えると干し肉や回復薬ばかり用意する訳にもいかないし、果物もいくつか買っておくべきだろう。腹痛になるから俺は喰わんが。
「ん? あれは……」
食料も旅に問題ない量を買って丘に戻る途中、ふと俺は視界に映った古めかしい作りの店に置かれている、人の身長ほど大きく先端が緑色で、赤い宝珠が埋め込まれた杖が気になった。普通の人間にはわからないだろうが、あの杖から強力な魔法の力を感じたのだ。何の魔法がかかっているのか不明だが、エナジーの力を増幅、制御するための装備として優れた代物のようだ。
「……アイツの今後のために手に入れておくか」
自分でも気にかけ過ぎていると思うが……まあいい。アンティーク専門店らしいその店に入り、普通の人間には全く用途が無い事で売れ残っていたその杖を購入した。大きさ的に場所をとるからむしろ買ってくれてありがたい、とまで言われて予想より安く手に入れられた。
ようやく夜を明かした場所に帰って来ると……“星読み”は座るのに丁度良い岩に石灰石で何かを書いている所だった。
「何を書いているんだ?」
「ナイショ、乙女の秘密だよ」
「そうか。こんな所におまえは乙女の秘密を晒すのか」
「な、なんかそう言われると急に恥ずかしくなるよ!」
「冗談だ。疎まれていたとはいえ、ここはおまえが生まれ育った街だ。離れる前に何か残しておきたい言葉があるのだろう?」
「うん」
「ならそんな上じゃなくて、もっと下の日陰の所に書いておけ。風化が進まないから残りやすいぞ」
「う〜ん……じゃあ下にはちょっとした文だけ書いとくわ」
そうして少し時間をかけて書き残したい言葉を刻み、彼女は立ち上がると土埃を払う。
「じゃ、行こっか。方角は南、目的地は神秘の森!」
笑顔を見せてそう言った彼女は意気揚々と歩きだし、同行者が増えた事で俺もすぐに目的地に向かうのだった。
『神秘の森』。このご時世に未だに緑が多く残っている森で、木はそこまで多くは無いものの、退廃した世界でも自然が力強く生き残っている印象を感じさせた。迂闊に足を踏み入れた所で迷う程大きく深い森では無いが、吸血変異によって狂暴化したモンスターが稀に入り込んでいる時があるらしい。モンスターなら暗黒銃でも素手でも問題なく倒せる。アンデッドがいた場合は少々厄介だが……状況によって決めよう。
「そういや聞いてなかったけど、サバタは何を集めてるの?」
「『火竜の牙』、『水竜の尾』、『風竜の翼』、『地竜の爪』という四つの触媒だ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ