暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十六話 戦争計画  
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。その分だけ補給の維持も大変だろう。引き摺りこんで補給を絶つ、絶てなくても不安を持たせればそれだけでこちらが優位になる。レベロ、我々が勝てる可能性は高まるんだ。その辺りは市民に丁寧に説明するんだ」
「勝てるといっても同盟が崩壊しなければだ」
崩壊すれば戦わずして敗ける。それにシトレ達は勝った後の事を考えていない。

「君こそ分かっているのか? フェザーンを放棄するという事はペイワードを見捨てるという事だ」
「已むを得んだろう。フェザーンより同盟が生き残るのを優先せざるを得ない」
「たとえ同盟が生き残ってもフェザーンはもう我々に協力しない。その意味まで考えて言っているのか?」
「……」
「どうやってこの国を建て直すつもりだ。フェザーンの協力が無ければ破産するぞ。それこそ帝国に占領された方が良かった、そんな事になりかねない」
何時の間にか二人とも顔を寄せ声を潜めていた。

「交渉で和平を結んだとしてもフェザーンは帝国の物になるだろう、イゼルローン要塞もだ。違うか?」
「……」
「同盟の再建はどんなに苦しくてもフェザーン抜きでやらなければならないんじゃないか?」
「……」
シトレがじっと私を見ている。

「だとすれば敢えてフェザーンを守る事に拘る必要は無い筈だ」
確かにそうかもしれない。余程の大勝利を得なければフェザーンとイゼルローン要塞の保持は難しい。シトレの言う事が正しいのだろうか? しかしフェザーン放棄、イゼルローン要塞放棄に同盟市民は耐えられるだろうか? 同盟は耐えられるだろうか? どうにも判断がつかない。

「……それに信じられるのか、フェザーンを」
「どういう意味だ」
「戦闘中にフェザーンが帝国に寝返ったらどうなる。軍は後方を遮断される事になるぞ」
「……」
「軍はそれも恐れているんだ」
虚を突かれた。そんな事を考えているとは……。

「君はペイワードが裏切ると思っているのか?」
シトレが首を横に振った。
「そうは言っていない。だが戦っている最中にクーデターが起きる可能性は有る」
「……」
「最近のフェザーンが不安定な事は君も分かっているだろう。あれは間違いなく帝国の手が伸びている。今フェザーンで戦うのは危険だ」
確かに危険かもしれない。溜息が出た。

「分かった。トリューニヒト、アイランズと話してみよう」
「ああ、頼むよ」
「勘違いするなよ、説得すると言っているんじゃない。君らの懸念を伝える、そういう事だ。出来れば軍と政府の意見調整の場を設けるようにも言ってみよう」
シトレが安心したように頷くのが見えた。それにしても厳しい状況だ。勝つ事も厳しければ同盟を再建するのも厳しい。気が付けば掌にびっしょりと汗をかいていた。



帝国暦 489年 10月 30日  オーディン 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ