ただいまはまだ遠く
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ぐ王。
そして黒麒麟は……背負う王だった。
己の道を行く王は他者に在り方を求める。言い換えれば、自身の在り方を他人に求めているとも取れる。
故に、華琳は呑み込んで見せろと誰もに示し、月は受け入れましょうと態度で表し、桃香は心を繋ごうと手を伸ばす事を欲し、黒麒麟は背負えと縛り付ける。
遠くに見える彼を見つめて、朔夜は震えていた。
――秋兄様と華琳様が見ている場所は一つだけ。常に乱世の終末の為の手を進めている。だから……袁紹は生き残らせなければならない、です。
朔夜達のような軍師が、華琳や秋斗、月の欲しいモノに気付けなかったのは、現状置かれている状況を判断した上で先に繋がる最善の選択を取ったが故のこと。
軍師達と違い、三人が積み上げていた思考は真逆の論理。数学の証明と同じく、先に結果を定めた上で逆算し、其処に繋がらせられる糸を選んで抜き取ったその一点。
王の思考は遥か遠くを見据えた上で行われる。
今失われる命に拘らず、されどもそれを呑み込み受け入れ背負い、真っ直ぐに立って高みを目指してこそ覇の道を行ける王なのだ。
だから華琳と秋斗と月はこの官渡で同じモノを求めた。現在よりも未来の大陸を見据え、判断した上で麗羽を生かして自分達の欲しいモノを手に入れようとしている。
這いつくばって進む麗羽を見る朔夜の視線は冷たい。憐みも挟まぬその視線は、彼女個人に対しては興味を持ってすらいなかった。興味があるのは、使えるだけの価値があるかだけ。
――袁麗羽……実の所あなたは生きても死んでも構わないんです。あなたが死んだら一手遅れてしまいますが、道筋はほとんど変わらない。ただ、生き残るなら、悪評を対価に得られるあなたの利用価値は計り知れない。
彼の考えが分かった以上、次に取る戦略は何かと考えれば、麗羽を傀儡とするのが朔夜の組み立てた乱世の絵図では必要なこと。
既に次の準備を彼女は着々と頭の中で積み上げている。彼が表に王として立とうとしないならば……彼を主としていても、朔夜の掲げる王はただ一人、月のみ。
――月姉さまの片腕は詠さんで決まり、です。袁麗羽も頭は悪くない、それに加えて張勲と私を据えられるので……秋兄様は劉備軍に居た時と同じく、いえ、より強固に、もう一つの曹操軍を作り上げられる。
多角的に物事を見極められる頭脳を持った組織である曹操軍をもう一つ、彼は作り上げようとしている……それが朔夜の結論。
――文醜を副官にした秋兄様は客将のまま、顔良を副官にする明さんは裏の将として月姉さま寄りに位置付ける。霞さんは中庸の立場としてどちらにも忠を誓い、二人の君主の抑えとして意見を述べ、繋ぎ役として機能する。表裏合わせて曹操軍の五大将軍を完成、軍事の安定も測れますし、万が一両軍の齟齬が発生して
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