ただいまはまだ遠く
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うにイトを張り巡らせた。
――位を奪った所で国家反逆の罰には釣り合わない。真名を捧げさせた上で何処かの勢力に逃がすなんざ悪手中の悪手だし、民に落として人並の幸せなんて……そんなモノはまやかしの幻想だ。あいつが袁紹として生きた事実は、消える事が無いんだから。
月と詠を見てきたからこそ、人の為に生きようとするなら、麗羽には力を振るえる立場で生き残って欲しいと思った。
二人共ほぼ同じではあるが、董卓である月は特にその想いが顕著に出ていた。後悔と自責を今も心に持っている。行き場の無い感情を無力に受け止めて、人の為に走り回っている。心を砕き、人の為になりたいと希っていた。
麗羽がバカであれば良かった。ただのバカであれば、きっと傲岸不遜に強かに、何の罪の意識も感じずに生きていけたであろう。ただ、その場合は生かすつもりなど彼にも華琳にもないだろう。
しかし仮面を被っていただけの麗羽は、生きるとしても月達のようにしても気が狂うのではないかと秋斗は考える。
目立つ容姿や存在が、彼女を内密に生かす事を封じている。彼女の命を救うためには、反逆の罰を与えた上で生かさなければならない。
その場合、支える者が居たとしても……歴史上類を見ない厳罰の重さに耐えきれずにいつしか自害するか感情を失った人形になるか、もしくは自暴自棄を起こすかもしれない。そうして甘い汁を吸おうとするモノに……操られるのだ。
――だからこそ、自分の力で生を掴みとらせよう。自責の鎖を身に着けてでも、自分の意思で生きる事を選んで強くなって貰う。そうすれば平穏を作らんと願う英雄の一人に再び成れる。そして何より……
震えながら進む麗羽の姿を冷たくも暖かく見据えて、彼は目を細めた。
――“ゆえゆえの下で傀儡として力を振るって貰うのが俺の目的の為には最善だ。”
兵士達は絶対に知る由もない事だが、麗羽に降りかかる自責の鎖は、白蓮にだけでは足りない。
彼女が生きるというのなら、月の存在も知る事になる。
欺瞞正義の果てに殺した少女が生きていた……復讐に走って相違ない一番の存在が麗羽の側に居る……それはどれだけ恐ろしい事か。
月は生きて世界を変えたいと望んでいる。麗羽よりも先に正当性を以って戦って、麗羽によって全てを奪われた彼女は未だに世界の改変を諦めず、生き抜く事に縋っている。
だから麗羽は逃げられない。だから麗羽は裏切れない。だから麗羽は……月に従うしかなくなる。
――自分よりも先に絶望から再び立ち上がろうと決めた真月に、袁麗羽では届き得ない。
自責の鎖で雁字搦めにした上で、彼女の心を叩き折って絶対の服従をさせること。
それが彼の選んだ黒麒麟の策略の一つであった。
華琳は呑み込む王。
月は受け入れる王。
桃香は心繋
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