ただいまはまだ遠く
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労からか、精神的な負担からか、それとも戻りかけたからか……全身の力が少しだけ抜けそうになった。
「……休んでる暇なんざねぇんだがな」
ぽりぽりと頭を掻いて苦笑を一つ。
夜天を見上げてから、彼は脚を進め始めた。階段を降りて行く足取りは問題なく、疲労感は確かにあるがぐらつく程でも無かった。
――次の戦は……西涼だ。その前にする事が一つある。
空気に当てられたのだろうと結論付けて、いつものように、先へ先へと思考を回していく。
変わらない彼は、戦が終わっても休むはずはなく、ただ乱世の為に生きていた。誰にも理解されない乱世の未来絵図の為だけに、積み上げていた。
「孫呉への挨拶は誰かに任せるとして、俺は劉備の所に向かおう。噂通りなら記憶を失った事も一手に出来るし……不安要素の多い“赤壁”なんざで戦を起こさないように動かないと、な」
†
白の世界でいつものようにモニターを見ている少女は笑みを深めていた。
「ふふ……いい傾向です」
無限に近しい確率を見てきた彼女は、今まで見た事のない流れを感じて満足気であった。
「復元力である袁家を袁紹に滅ぼさせる。これでまた、ゼロ外史に近づけました。第一適性者である田豊が変えてしまった歪みが修正され、本来の袁家に帰順し、“袁紹が官渡以降、曹操に従った場合の乱世”と同じモノが描かれます」
くるくると髪の毛を弄びながら、また彼女は笑った。
「そして何より……内部の安定を迅速に行える事によって劉備に対しての警戒が強くなり、“起こるはずの戦”が二つほど消滅しました」
カタリ……とキーボードを鳴らす。
映し出されたのは二つ。
多くの劉備軍に寡兵で籠城を行う曹操軍。
山岳地帯で追い詰められている秋蘭。
その二つ。
「田豊の時でもそうですが、曹操軍に適性者が所属する時は必ず、実数外史と同じこの二つ戦が起こってました。特に“定軍山”……史実では赤壁後に起こるはずのこの戦は魏を主軸にすると繰り上げられる事が多い。でも、今回その心配はありません。袁紹を取り込む事で時計の針を早めやがりましたし、戦力図的に傾きがひどくなったので世界の流れが大きく狂いましたから」
またカタリとキーを叩き、モニターを切り替える。
映しだされた彼の姿に、少女は憂いの目を向けた。
「ただ……やはり記憶は戻りませんか。世界側の介入でまだ戻らないようになっている可能性がありますね、これは」
はあ、と大きなため息が宙の解ける。
「私が手を加えると世界も干渉できます。等価で成り立っているとすれば……対価は黒麒麟がぶっ壊れるような場合にのみ記憶の復元をさせる、とい
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