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乱世の確率事象改変
ただいまはまだ遠く
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の声が収束していく中で思いついたのは……一人。

“誰かの涙が零れて光る 今また誰かが泣いてしまった”

 紡がれる言の葉は人が紡ぐ旋律に乗せられて、麗羽が這う音だけが聴こえる場に小さく響いた。
 一小節だけの儚い想いの欠片、白の兵士達を駆けさせてしまった狂気の証が。

“あなたは一人 みんなの為と 夜の涙を掬いに駆ける”

 他の誰かが応えるように紡いだ。その声は少しだけ大きく、場に小さな波紋を広げて行った。
 愛しい主の笑顔を思い出して、目の前の女が壊した平穏を思い返して。

“どれだけ背中を見たでしょう 守られていると気付かずに”

 主に向ける想いの歌が、麗羽の動きを僅かに鈍らせる。
 震え慄き、悲壮に顔を歪ませて、彼らの歌声に恐怖を覚えた。

 自分の臆病で奪った罪を、自分の臆病で広げた戦火を、自分の臆病で無くしてしまった命を……思い出す。
 あるのはただ敵意のみ、誰も従わない異端の大地。白蓮だけの為に狂気に堕ちてしまった優しくて哀しい大地。
 狂気に溢れたその歌は、優しい詞であるはずなのに、彼女の心を引き裂く何よりの刃となった。

 有り得ない罰を受けて極限状態にある麗羽の精神は、後悔と自責の念だけで縋り付いて持っていると言えよう。
 せめてと思っていたのは二つ。
 後悔と懺悔に塗れた彼女は、人々に身を捧げようと思った。
 そして自分を想ってくれる誰かの為に生きようと思った。臆病の罪過を贖い、虚栄心からでなく心の底から大切なモノ達の平穏を望んだ。
 進む道が外道であろうと、存在そのモノが穢されてしまおうと、自分が生きている事で笑ってくれる二人と、自分の為に死んだ彼女の為と、自分に夢を馳せてくれた人々の為に。
 未来永劫許されることは無い、とその歌を聞けば感じて、怨嗟の声よりも心を引き裂いた。

 一人戦端にて指揮を取り、一人思考を回して策を練り、一人全ての責を受け止めていた白馬の王は、麗羽とは真逆の王である。
 玉座の上でただ指揮を取っていた麗羽とは全く違う。
 軍関係の知恵者なら、麗羽の在り方は当然と笑って語るだろう。だが一端の兵士達からしてみれば咎めたくて仕方ない存在であるのは間違いない。
 白蓮の友である桃香は、麗羽とほとんど似ていると言えよう。自分は戦で簡易的な指揮を取るだけで何もしない。一番の仕事は命令と言動の責を一身に受ける事である。
 しかし責めれらないのは何故か……彼女は兵士の前に出るから、民の前に出るから、身近な王として存在するから責められない。弱者の為の王は、戦えないからこそ民の代弁者であり、人身御供なのだ。
 汚い世界で甘い綺麗ごとを言っても誰も聞かないのは普通だが、自分が生きられたらと思う民はその綺麗ごとに乗っかりたい。直接的に自分達の声を聞いてくれる桃香は
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