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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第22話 一蓮托生
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脳に蛆がわいている。


「失くした者は戻らない、大切なモノほど元に戻っては駄目なんだ。―――だからこそ、俺はそれを失わない為には命の一つや二つ、喜んで燃やし尽くすさ。」
「私も……貴方にとって失くしたくないモノという事なんですか。」


 真剣そのものである、突き刺すような質量を乗せた言葉。
 それにおずおずと戸惑いを主成分とした表情の唯依の問い返しに、凪のように静かな笑みで忠亮は答える。

「ああ、お前こそ俺が探し求め続けてきた戦う理由だ。……いや、この言い方では誤解を生むな。」

 憂いていた、餓えていた、飽いていた。
 如何に乱世の世とはいえ、国は政治も誇りも何もかもが腐り誇れぬ程に朽ちていた。そんなモノの為にどうして必死に戦える。
 日本人が日本人である事を誇れないようにされて、その中で腐りきった糞虫どもが保身と我欲の為に国を食い荒らしてきた。
 その中で、心の底から満足の往く戦いとその勝利を求め続けていた―――我武者羅に。

 そして、やっと見つけたのだ―――この陽だまりを、輝きを。
 命を燃やし尽くすのに足る理由、戦う者の心が還る場所にして拠り所。
 彼女こそが俺にとって如何な宝石よりも勝る至高の宝石なのだ……もう、この激烈な思いを抑えられない。まどろっこしい真似なんて出来ない。


「ただあ……ッ!?」

 忠亮が動いた。

 咄嗟のことで驚いた唯依、伸びた手に反応すら出来ず捉えられる。
 そして、直後に唇を重ねられているという事に一瞬遅れ気づく――行き成りのことで身を強張らせ悲鳴を上げそうになるが、唇は塞がれているためそれは出来なかった。

「…………」
「…………」

 思ったよりも優しい口づけ、引き伸ばされた刹那の中でそんな場違いに呑気な感想が唯依の胸裏を占めた。
 ―――初めから、多分この人に捧げることになるだろうと思っていた物だが、こういう形で奪われるとは少々意外だった。


「―――ひどいです。」
「すまんな、俺は身勝手な男なんでな――――お前はどうか知らんが、俺はお前を愛している。」

「篁となるというのですか―――この私を、篁家の頭領を妻にする意味を分かっているんですか。」

 まだ、この目の前の蒼を待とう青年を愛しているかと言われれば断言が出来ない。
 けれども、惹かれ始めている自分がいるのも確かだった。

 だけども、唯依という一人の少女としての個は篁唯依という公よりも優先順位は低い。彼が篁の人間として生きないというのなら―――ここで縁を切らねばならない。

「ああ、分かっている。俺の理念は場合によっては篁の理念に反するという事もな―――(おれ)が篁の名を背負うことに成ろうとも、(おれ)は俺の理は曲げない。」
「その信念は――
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