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戦闘城塞エヴァンゲリオン
第1話Aパート『戦闘城塞』
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戦兵器。“エヴァンゲリオン”、その初号機(しょごうき)
極秘裏に建造が進められてきた、我々人類の切り札よ」

「…これが、人類を守る仕事。と、いうことですか」



「そうだ」
声が響く。

「ひさしぶりだな。…シンジ」
上からの声に、その場の人間の視線が集まる。
壁に突き出したガラス張りのフロアに一人の男が立っていた。
薄く色の付いた眼鏡をかけた、顎ヒゲの男。
特務機関ネルフ総司令、碇ゲンドウ。


「出撃」
「…出撃?」
一拍おいて吐き出された言葉に、ミサトは思わず問い返した。

「零号機は凍結中の筈でしょ。…まさか
初号機を使うつもりなわけ?」
横に立つ友人に目を移し訊ねる、
リツコの答えは肯定だった。

「他に道はないわ。それに
パイロットは、さっき届いたでしょう?」

「僕が、これに乗る。…そうですね?」
「そうなるわ。…驚かないのね」
当然のことのように受け入れる言葉に、
むしろリツコやミサトのほうが驚かされた。

「ええ。しかし、…待ってほしい」
すぐにでも乗せる準備にかかりそうなリツコに対し、
手を挙げて待ったをかけた。

「乗るなら、赤木博士から説明を受けろ。
乗るつもりがないなら、帰れ」
ゲンドウからも急かすような言葉がかけられるが
青年の答えは次のようなものだった。

「否、そうではなく。…条件が。
今日これに乗る、そのことに対して」
「「…条件?」」
女性二人が異口同音に聞き返す。

「受け難い命令に対し、拒否できる権利を」
つづけてヒデオは言い放った。

何を言うのかと、軍人であるミサトは思った。
命令というものはそんな簡単に拒否できてよいものではない。

「僕は職業軍人ではなく。例えば状況の中で
人を殺すような命令がされても応じかねます。
命令違反、敵前逃亡、で銃殺刑。では困る」

「そんな命令は出さないわよっ」
淡々とつづけるヒデオにミサトは反駁した。

「逃げ遅れた市民はともかくとして。
興味本位や誤った正義感で戦場に出てきた厄介者を
彼らの危険を人命を、無視して戦えとは言わない。と?」

「じ…人命優先で指揮するわよ」

「逆に、そんな人たちを救出する時間稼ぎに
自分の命を危険に(さら)せと」
さらに淡々と真逆の例をつづける青年。

「って、どっちなのよっ」

「どちらもです。
状況によって、あなたの判断は変わるでしょうし
僕にとっての意味も変わってきます。
だから、そのとき僕がどうするかは
わからないのです。」


「…好きにしろ」
言葉は天上、ネルフ司令――碇ゲンドウから降ってきた。

「しかしっ、司令」
「乗ってさえいればいい。それ以上は望まん」
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