プロローグ
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ゴドリックの谷から赤ん坊と半巨人を乗せたオートバイが空を飛ぶ様子を目で追いながら、『死神』は呆れたように溜め息を吐いた。
「……赤ん坊にやられてちゃ世話ねーよ、なにやってんだあのバカ」
コバルトブルーのマントをはおり、シルクハットをかぶった長身の青年は詰るような口調でそう呟く。
−……こーなっては『死喰い人』も投獄か降伏で全滅だな。……いや、ルシウスとかは頭がキレるからうまくやるかもな。
……どっちにしても俺にはもう関係ねーな
ひとしきり考えをまとめたあと、『死神』は踵を返し、懐から杖を取り出す。
「じゃーな、ヴォルデモート。どうせ生きてるんだろーが多分悲しいほど弱体化してんだろ。再び這い上がってこれたら戻ってきてやるよ。俺に助けて貰わねーとそれぐらいのこともできねーようじゃ、お前と組む価値はねーからな」
突き放しているようにも信頼しているようにも聞こえる言葉を残し、大きな衝撃音とともに『死神』はゴドリックの谷から姿を消していた。
その日、イギリス魔法界を震え上がらせた闇の魔法使い、恐怖の象徴、悪の中の悪、名前を口にすることも憚れるほど恐れられた男、ヴォルデモートが一人の赤ん坊に消滅させられた。
ヴォルデモートの失墜とともに彼の部下である闇の魔法使い『死喰い人』は全滅した。
ある者は殺され、ある者は監獄に収監され、またある者は言葉巧みに罪を逃れ、表の世界に舞い戻った。
そして……『死神』−唯一ヴォルデモートと肩を並べ、彼に匹敵するほど恐れられた男。出会った人間は一人を除いて必ず殺されているためそのように呼ばれており、どのような人物なのかすら不明の男−は、ヴォルデモート失脚後完全に姿を消した。
元々一部では、『死神』などそもそも存在せず、死喰い人達の悪行が重なり合いそのような架空の人物が生まれたという説があり、彼の失脚後はその説が完全に主流になり、魔法省も数ヶ月で『死神』の捜索を打ち切った。
「じゃがのうマクゴナゴル先生、『死神』は間違いなく実在する」
『例のあの人』と『死神』が姿を消した数年後、ホグワーツ魔法魔術学校校長アルバス・ダンブルドアが副校長であるミネルバ・マクゴナゴルにそう語る。
「実際対峙してみればわかる。あやつに勝るとも劣らない魔力、心が強くない者の戦意を挫く威圧感。
……そして高純度の殺意。どれも『死喰い人』とは一線を画すほど強大のものじゃ」
「……では、『死神』は一体どこに?」
普段は厳格そうな表情を不安そうに曇らせたマクゴナゴル先生がそう訪ねる。
「おそらくもうイギリスにはいないじゃろう。あの者はヴォルデモートの思想に賛同していたわけでも、あやつに忠誠を誓ったわけでもない。
あやつが求めているのは闘いや戦争。もしあやつがイギ
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