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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十三 音の五人衆
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る。

「大蛇丸様に束縛されるのを対価に、ウチらは力を手に入れた。同様にお前は強さを得られぬ代わりに、木ノ葉に縛られているんだよ」
「―――それとも……忘れるのか。忘れられるのか」
葛藤するサスケを見兼ねたのか、それとも焦れたのか。
多由也に続いて君麻呂が冷然と告げる。その眼には何の感情も見受けられなかった。


「―――うちはイタチのことを……」
それが決定打だった。





「返事は今夜貰う。くれぐれも目的を見失うなよ」と念を押して言い捨て、一先ずサスケの前から姿を消す『音の五人衆』。
だが最後に見た、眼を大きく見開いていたサスケの顔から、手応えあり、と彼らは内心含み笑っていた。
どちらにせよサスケが何かしらの決意を固めていたのは確実。後は答えを待つだけ。

各々は秘かに己の肌に標された痣に触れる。無意識に触れたソレは束縛の証として自身の身を巣食う呪印。
侵食すれば身体の隅々を纏うソレは正に、己を拘束する枷そのものだ。
翼をもがれ自由を奪われた鳥が、蛇を前に成す術など無いのと同様に。


(だからこそ、うちはサスケ…。てめぇには犠牲になってもらうぜ)

己の身に巣食う呪印に触れながら、多由也は嗤った。
ナルトを侮辱したサスケへの殺意を押し殺して。
















「くあ〜ぁ……眠い…」

眼前に聳え立つ書類の山。それを前に彼女は堪え切れずに欠伸する。
襲ってくる睡魔と闘ってきた綱手は、五代目火影に就任してからというもの、休む暇の無い日常に溜息をついた。

ふと魔が差して、きょろきょろと周りを窺った後、書類の山に顔を伏せる。少しだけ、と瞳を閉ざした瞬間に、扉をノックされ、彼女はガバリと顔を上げた。
「い、いや、今のはちょっと休憩しようと思ってだなっ!決して眠ってたわけじゃないぞ!」
聞かれても無いのに慌てて言い訳する。だが直後、瞳に飛び込んできた思いも寄らぬ来客に綱手は眼を瞬かせた。

「お前か…。どうした?」
後ろ手で扉を閉めた子どもに、綱手は訝しげに訊ねる。初対面では生意気だとしか思えなかったが、己が現在火影の席に就けたのは目の前の功労者のおかげだ。
口を閉ざしたまま、けれど身動ぎ一つしない子どもに、他の者には聞かれたくない話なのかと綱手は悟る。

幸い、今は黄昏時。この時刻は里人にとっては仕事終了間近であり、忍びや暗部にとっては活動開始前だ。
つまり一日の中で最も人が一息つける時間帯である……火影の自分以外は。

火影室に誰も近づかないよう人払いして、綱手は椅子に座り直した。改めて視線で促せば、押し黙っていた子どもの口がようやく開く。
けれど開口一番の一言は、綱手の眠気を覚ますには十分過ぎるものだった。



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