暗黒の戦士
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似ているため耳を澄ませるが、魔笛らしき音は聞こえなかった。そのままヴァンパイアは苦しみながら超人的な跳躍で倉庫の窓を突き破り、凄まじい速度で逃げ去ろうとした。
「逃がさん! 暗黒転移!!」
「な、消えただと……!? しかし、御神の剣士ともあろう者が武器を奪われてしまうとは……くそっ!」
得物を手放してしまった恭也が落ち込んでいるが、彼は元々すずか達の救出に来た以上、今は深追いしない事を選択していた。そして視界の端で倉庫の外に来ていたらしい誘拐犯の取引相手の連中を捕まえていた使用人服の女性二人がこっちを驚いた様子で見ていたのを無視し、おれは逃げ去ったヴァンパイアを暗黒転移とゼロシフトで追いながら状況を考えておく。
あのヴァンパイアは間違いなく世紀末世界のイモータルの眷属。という事はあのヴァンパイアを生み出したイモータルもどこかにいる事になる。つまりアレを含めて最低でも二体、闇の一族がこの地を闊歩しているわけだ。なのにおてんこがいない以上、何らかの手段を用いて倒した所でヴァンパイアのダークマターを完全に浄化できるパイルドライバーは召喚できないため使えない。ヴァンパイアはダークマターを焼き切らないといずれ復活してしまうから、このままでは手の打ちようがない。誰であれヤツを本格的に倒すのは焼却の準備を整えてからにするべきだろう。
かと言ってヤツを放置していれば近い内に誰かを吸血し、アンデッドにされる危険がある。そうなれば太陽の力を使える人間がいない今、状況は更に悪化してしまう。これ以上現状を悪化させるのも得策ではないから、ヤツは見逃すまいとしている。
それにしても周りの景色が流れる度に思う。地面が舗装された道、朽ちた様子のない家が立ち並ぶ街……ここはまるで文献で見た旧世界のようだ。かつて大規模な吸血変異が起きる前に存在していた人類の最盛期。ここが本当に世紀末世界かはともかく、まさかおれがこんな形で関わる事になるとはな。
「うぅ……! 心が……闇に……し、ずむ……。血……血ハ、ドコダ!!」
「追い付いたぞ……!」
ゼロシフトと同等の速度で動けるヴァンパイアに驚きもあるが、ヤツは倒さなければならない存在だ。今まで狙いを正確にするため撃つ時は一旦動きを止めていたおれだが、この状況ではそんな悠長なまねをしている暇は無い。ゼロシフトで走りながらヤツが移動する方向を未来予測し、その場所に暗黒ショットを発射する。
「ッ!!」
ヴァンパイアは恭也から奪った小太刀で迎撃し、なんと弾丸を掻き消してきた。太陽銃を使うジャンゴにも出来なかった事を平然とやってのけるヴァンパイアに思わず驚いてしまい、その僅かな間に状況が変化していた。
「ジュエルシードの反応はこの先に…………えっ!?」
交戦していたおれ達の進路上に歩いていた、
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