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戦場の蛍
2部分:第二章
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聞いてまずはその目を動かした。
「何か特別な任務と見受けますが」
「夜間出撃だ」
 そうリヒャルトに伝えてきた。
「今夜だ。いいか」
「夜間出撃ですか」
「そうだ。この基地で夜に戦えるパイロットは君しかいない」
 この時代は全天候で戦える機体もなくパイロットも限られていた。夜間戦闘機といったものもありアメリカ軍のP−六一ブラックウィドーが有名である。
「それでだ。頼めるか」
「ですが司令」
 リヒャルトは夜間出撃と聞いて司令に言葉を返すのであった。
「今この基地には夜間戦闘機はありませんが」
 丁度全部撃墜されてしまっているのだ。元々一機か二機しかなくそれが全てやられたのだ。戦闘機と一緒に来たパイロットもその時に行方不明になってしまっている。
「どうされますか、それで」
「メッサーシュミットで出撃してくれ」
 これが司令の言葉であった。
「今回は。それでいいか」
「メッサーでですか」
「機体もそれしかない。そして出撃できるパイロットも君しかいない」
「ないものばかりですね」
 リヒャルトは司令の言葉を聞いて苦笑いせずにはいられなかった。
「元々ものがある軍じゃないですけれど最近はどうにも」
「まあそう言うな。これも戦争だ」
「そうですね。じゃあ行きます」
「済まないな」
「何、戦争なんで」
 司令の言葉を繰り返す形になっていた。半分はわざとである。
「行かせてもらいますよ。じゃあそういうことで」
「出撃してレニングラードの西で他の基地の部隊と合流してくれ」
「西ですか」
「そうだ。そこから街の上で敵と戦う予定だ。赤軍の夜間戦闘機部隊とな」
「ああ、イワンの新しい戦闘機はそっちでしたか」
 そこまで聞いて話がわかった。
「連中は夜も昼もありませんからね、本当に」
「そういうことだ。ではいいな」
「ええ。夜での戦いもお手のものですよ」
 彼はそう言って屈託のない笑みを見せるのであった。
「ドイツ軍にとってはね。じゃあそういうことで」
「頼むぞ」
「了解」
 こうして今夜の出撃が決定した。リヒャルトは真夜中の空港に出て愛機の側にいた。夏だからそれ程寒くはない。だが夜だというのに虫は少ない。彼はそれを見て言うのだった。

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