第5部 トリスタニアの休日
第1章 情報収集任務
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り始めてる。
そんな噂をルイズは聞いたことがある。
これがそうなのね。
王国の権威が、貴族の威厳が、ま、そっちはともかく私の威厳が!
ルイズはぴくぴくと震えた。
さんさんと照りつける日差しに目を細めたシエスタは、ふう、と溜息をつくと胸元をはだけ、ハンカチで汗を拭う。
「ほんと……、暑いですわね。夏って」
野に咲く花のような、健康な色気がそこからあふれ出した。
脱いだらすごそうな、二つの丘の谷間がルイズの目に飛び込んでくる。
ルイズははっ!と気づき、ウルキオラの顔を見た。
ウルキオラは全く興味がないように一目見た後、視線を落とし、紅茶を啜った。
そんなウルキオラにほっとした。
と、同時に、なにほっとしてんのよ!と自分を責めた。
私の勝ちね!ええ、こっちは貴族よ!黙ってても高貴がシャツの隙間から零れてしまうんですのよ!
ルイズは「ふぅ暑い」と呟き、シャツのボタンを外した。
それからハンカチで汗を拭う。
しかし……、そこにあるのは谷間ではなく、どこまでも広がる爽やかな平原であった。
ウルキオラはどっちにも興味がないのか、まったく見てくれない。
そもそも、女の色気に興味がないウルキオラに対して、色気の勝負をすること自体が間違っているのだ。
そんなウルキオラの様子を見て、シエスタが口を押え、ぷ、とやらかしたのでルイズはついにキレた。
「な、なによ!今、笑ったわね!」
「そんな……、笑うわけないじゃないですか。そんな、ねえ、私が貴族の方を見て笑うなんて……、ねえ?」
シエスタは顔を輝かせてルイズを宥める。
それから顔を背け、ぽろっと呟いた。
「……子供みたいな体して貴族?……へぇ」
ルイズに四十五のダメージ!
ルイズの口から「かはっ」と呼気が漏れた。
「なんつったの!ねえ!」
「……さあ、……なんにも。なにせほら暑いものですから。暑い暑い。ああ暑い」
わなわなとルイズが震える。
ウルキオラが呟いた。
「ルイズ」
「あによ」
「黙れ」
ルイズに百二十三のダメージ!
ルイズは「なっ…」と、切なげな溜息をついた。
そして、ウルキオラに向かって拳を何度も振り上げる。
ウルキオラはひょいひょいと華麗にかわす。
シエスタが「落ち着いてください!ミス・ヴァリエール!落ち着いてください!」とその背に抱き着く。
一同がそんないつもの騒ぎをやらかし始めた時……。
ばっさばっさと一羽のフクロウが現れた。
「ん?」
そのフクロウはルイズの肩に止まると、羽でぺしぺしと頭を叩いた。
「なによこのフクロウ」
フクロウは書簡をくわえている。
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