第4部 誓約の水精霊
最終章 悲しみの対決
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、一同は驚いた。
「どうして…助かるのですよ!」
アンリエッタは心底理解できないといった様子でウェールズに言った。
「僕は一度死んだ身だ。そこまでして、生きながらえようとな思わない」
「そんな……いやですわ…、また私を一人にするの?」
「アンリエッタ。最後の願いがあるんだ」
「最後だなんておっしゃらないで!」
「僕を忘れてくれ。忘れて、他の男を愛すると誓ってくれ」
「無理を言わないで。そんなこと誓えないわ……嘘を誓えるわけがない」
アンリエッタは肩を震わせた。
「いや、誓うさ。君は…僕が唯一愛した女性なのだから」
ウェールズはアンリエッタの頬に流れた涙を拭った。
そして首を捻り、ウルキオラの方を向いた。
「君に、お願いがあるんだ」
「なんだ?」
ウェールズは、ごほごほと血を吐いた。
アンリエッタがウェールズの名を叫ぶ。
「アンリエッタを…アンリエッタを守ってくれ……僕の……かわ……り……に」
そう言い残して、ウェールズの首はだらんと垂れた。
「ウェールズ様?」
しかし、ウェールズは答えない。
アンリエッタがその肩を揺さぶる。
が、ウェールズは既に事切れていた。
思い出の一つ一つを、宝石箱の中から取り出すようにして、確かめていく。
楽しく、輝いていた日々はもう来ない。
「頑固な人」
まっすぐウェールズを見つめたまま、アンリエッタは呟いた。
「最後まで、自分の決めたことを変えないんだから」
ゆっくりとアンリエッタは目を閉じる。
閉じた瞼から、涙が一筋垂れて頬を伝った。
傍でそんな二人の様子を見ていたルイズは、ウルキオラに抱き着いた。
声を殺すようにして泣いている。
ウルキオラに抱き着きながら、ルイズは思った。
私はウルキオラがこの世を去る時、私の前からいなくなるとき、笑顔で見送れるのだろうか?
それとも……。
ルイズはそれ以上考えるのをやめ、ウルキオラの服に顔を埋めた。
ウルキオラはそんなルイズの感触を感じながら、ウェールズの亡骸を見つめていた。
一人の人間が死んだ。
それこそ、元居た世界でも、このハルケギニアでも何度も目にした光景だ。
なのに……。
なのにどうして、こんなにも胸が締め付けられるのか。
この感情は何なのか?
何故こんなにも苦しいのか。
わからない。
それを表現する言葉も、感情も、知能も、ウルキオラは知らなかった。
ただ、言えることが一つだけあった。
もう一度味わいたいものではないと。
ルイズが死んだら、またこのような感情が沸き起こるのか?
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