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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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ックブーム》と言う配下を引き連れ戦場へ飛び込んだ。










 ロマリア艦隊とガリアの両用艦隊との戦闘は膠着状態に陥っていた。
 百二十を数える両用艦隊に対し、ロマリアの艦隊はその半分にも満たない四十隻しかない。にも関わらず、戦端が開かれてまだ戦局が決定しないのは、様々な要因が重なった結果からであった。
 例えば互いの士気の違いである。
 負ければ国土が蹂躙されるロマリアにとっては、敗北は絶対に許されない。死んでも通さぬとの気概は、それこそ天を突く程までに高かった。
 それに対しガリアの両用艦隊は、指揮する上官の一部を除けば、まともな説明もないまま戦争が始まり、しかもその相手は自分たちが信仰する宗教の中心地である。いくら戦う事が仕事の兵士であろうとも、確固たる戦うべき理由もないままに戦えるようなものではない。士気は地にめり込む程に最悪であった。
 他にも両用艦隊内で発生した内乱や攻撃の拒否等もあり、戦闘が始まってから数時間が経つ今でも、未だ互いに一隻の船も落ちてはいなかった。
 とは言え、互いの船には砲弾や魔法による傷がそこかしこに刻まれており、唯一無傷なのはそれぞれの艦隊の旗艦だけであった。
 いくら両用艦隊の士気が低く、様々な問題が発生していたとしても、遮蔽物のない空において倍を超える数は、他の不利を圧するに足る力であった。ロマリア艦隊を指揮する総司令官は、このままではいずれ磨り潰されてしまうだろうとの予感があった。
 両用艦隊から降ろされた巨大なゴーレムが虎街道を通り、アクイレイアへと向かっているとの報告も上がっている。既に少なくない犠牲が発生しており。ここで自分たちが負ければ、取り返しのつかない状態にまで陥るだろう。
 経験が形になったかのような黒い日焼けと深い皺が刻まれた顔を厳しく引き締めた総司令官は、両用艦隊の要である敵の旗艦“シャルル・オルレアン”を睨み付ける。
 まともな攻撃を行っていないにも関わらず、未だ敵艦がこの場で戦闘を行っているのは、旗艦である“シャルル・オルレアン”の存在があるからだろう。指令官は一度目を閉じると、ぐるりと辺りを見回した。周囲には、長く付き従ってくれた部下たちの姿がある。司令官の視線に気付いた彼らの顔が、何かを感じ取ったのか一瞬強ばるが、直ぐに信頼しきった力強い笑みに代わり小さくその顔を縦に一度動かした。

「……すまない」

 司令官の口が小さく動く。
 呟かれた言葉は、彼の部下たちの耳に届く事はなかったが、長年付き従ってきた部下たちはハッキリと耳にしたかのように浮かべた笑みを深くした。
 戦端が開かれる前。戦力差は既に明らかであったため、事前に旗艦が落ちた際の命令系統は事前に準備出来ている。例えこの旗艦が落ちようとも、戦闘に支障はない。普通ならば厳重
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