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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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自分の皮膚であり、竜の手足が翼が自分の四肢であると。鱗の一枚一枚まで己の意志を広げ、人とは違う異形の身体を己のモノとする。
 想像(イメージ)するのは身を守る鎧にして全てを切り裂く剣。
 空を切り裂き蹂躙する何者も追いつけない剣。
 思い起こされるのは、何時か見た空飛ぶ機械。
 魔法でも魔術でもなく、人の知恵が生み出した科学の剣。
 空を往き支配するもの。
 航空力学に基づき人の手により生み出された最速を許された血の通わぬ科学の竜。

「――――――ッ!!」 

 無言の咆哮と共に銀色の光がセイバーの身体から間欠泉の如く吹き上った。銀に輝く魔力は、天からの祝福のように騎竜であるメルセデスの体を包み込む。時間にしては一秒にも満たないその刹那で、全ての工程は終了していた。
 かつて科学の馬に行い宝具にさえ迫った自分以外に対する鎧の付加。
 紡ぎ上げられ具現化したセイバーの魔力は、メルセデスを異形の竜と化した。
 姿形は確かに竜である。しかし、その全身を覆う流れる水を思い起こさせる流線型の鎧が覆っていた。銀に輝き、そこらにある角ばった鎧とは違う滑らかな曲線を描く鎧には、見るものに畏怖を抱かせ近寄りがたい一種の力を放っていた。特徴的なのは流線的な形だけでなく、翼の下に付けられた筒のような何か。それが両翼二枚の翼のしたにそれぞれ二本ずつ、合計四本付いていた。ハルケギニアの者が見てもそれが何なのか想像も出来ないだろうが、士郎と同じ世界の者が見れば、思いつくものがあるだろうソレ(・・)
 航空力学に基づかれた空を飛ぶための鎧を身につけた竜は、完璧な空力特性を己のモノとし更に速度を上げる。更にセイバーは“風王結界(インヴィジブル・エア)”を鏃型に広げ竜の鼻面に展開させた。限界まで圧縮された気圧の傘は、空気抵抗から竜を解放した。
 空を飛ぶ際、常に感じていたソレ。
 速度を上げれば上げるほど自身の身体を縛る鎖のようなソレが砕け散った瞬間。
 セイバーの駆る竜―――メルセデスは開放の喜びに咆哮を上げた。

 ッオオオオォォォォォォ―――ッ!!!!

 同時に、セイバーの魔力が爆発した。
 “竜の心臓”から生み出される莫大な魔力が、鎧を通して竜の両翼の下に備え付けられた筒へと流し込まれる。限界まで注ぎ込まれた魔力に、魔力て紡ぎ上げられたロケットエンジン(・・・・・・・・)が火を噴く。何十もの大砲が同時に発射されたかのような爆発音が響き、津波の如き衝撃が空を走った。
 そこから生み出された速度は最早人の目では視認する事が不可能なモノであった。
 地上から空を見上げたとしても、点ではなく線としか見えない速度で空を翔けるソレは、完全に音を置き去りにしていた。
 一条の流星と化したセイバーと竜は無限の空の下、|見えない衝撃《ソニ
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