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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶 〜 帝国歴487年(三) 〜
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「取り敢えず半分は説得が終わったわけだ」
「問題はあとの半分だろう、軍務尚書」
「ごねるかな?」
「ごねるだろうな」
また二人で顔を見合わせて苦笑した。ローエングラム伯の下で働くなど真っ平だと言うに違いない。何かと理由を付けて逃げようとするのは見えている。
「まあそれでも頼み込めば何とか引き受けてくれるだろう。将兵達からの嘆願も有る事だ、なんとかなる筈だ」
「頼まれると嫌とは言えぬ性格だからな」
「だからついつい面倒を押付けたくなる」
ミュッケンベルガー元帥が人の悪い笑顔を見せた。楽しんでいるな、これは。
ミュッケンベルガー元帥が帰るとシューマッハ大佐を執務室に呼んだ。
「大佐、卿に新たな任務を命じる」
「はっ」
「宇宙艦隊司令長官の人事が決まった。近日中にローエングラム伯が司令長官に就任する。そしてヴァレンシュタイン少将が大将に昇進し宇宙艦隊副司令長官に就任する」
「それは……」
大佐が絶句している。冷静沈着な男だが驚いたようだ。愉快ではある。もっとも何に驚いたのかという疑問付きだが。
「大佐、ヴァレンシュタイン少将を副司令長官にする理由が分かるかな?」
「内乱に備えるため、と思います」
「表向きはそれで良い」
「と言いますと?」
シューマッハ大佐が眉を顰めた。
「ローエングラム伯が妙な事を考えぬようにという抑え役だ、意味は分かるな?」
シューマッハ大佐の顔が強張った。
「……はい。それで小官の役割は」
「表向きは乱が起こった時の私との連絡役だ。卿はヴァレンシュタイン少将とは一度ともに仕事をしている。問題は有るまい」
「有りません。……表に出せない理由は何でしょう」
「ローエングラム伯の動向、新たな副司令長官が抑え役として機能しているかどうかの確認だ」
「お二人を監視せよと」
「そうだ。内乱だけでも頭が痛いのに簒奪など許せる事ではないからな。宇宙艦隊司令部の内情を逐一知らせて欲しい」
「……分かりました」
顔だけではない、声も強張っている。
「人手が必要か?」
「いえ、一人の方が怪しまれず宜しいかと。ローエングラム伯は分かりませんがヴァレンシュタイン少将は油断出来ません」
「分かった。では異動の準備を進めてくれ」
「はっ」
帝国暦 487年 2月 27日 オーディン 軍務省 エーレンベルク元帥
「それで、ローエングラム伯の様子は如何かな? シューマッハ大佐」
『悪戦苦闘、と言ったところです。司令長官の椅子は思ったよりも座り心地は良くないでしょう』
「困るな、それは。司令長官の交代による混乱は最小限にしてもらわねば」
ローエングラム伯を疎んじながら混乱は避けたいか……、我ながら勝手な事を言っていると思った。
『問題が起きて
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