暁 〜小説投稿サイト〜
ああっ女神さまっ 〜明日への翼〜
明日への翼
01 RAIN OF LOVE
[1/9]

[1] 最後 [2]次話
 それはあまりにも突然だった。
「はぁ〜い、はぁい」
 一本の電話。
 他力本願寺で受けたのはウルドだった。
「はい、森里です」
『あ、ウルドさん?恵です』
「ああ、恵ちゃんね。お久しぶり。ここのとこ顔見せないけど元気してた?」
 しばらくの沈黙。
 ウルドは沈黙の重さにただならぬものを感じた。
『落ち着いてよく聞いてね』
 涙声の恵。
「どうしたの?なにがあったの?」
『螢ちゃんが……けいちゃんが……』
 電話口でしゃくりあげている。
『死んだの』
 やっと聞こえるかの小さな声。
「えっ!」
 ウルドは、恵のあまりの意外な言葉に、自分の耳を疑った。
「うっ、嘘。冗談でしょ」
『嘘や冗談でこんな事言えると思う?猫実市の中央病院。すぐに来て』
 それだけを伝えるのがやっとだったに違いない。
 電話はぷっつりと切れた。
 確かに冗談にしては性質が悪い。
 螢一は、今朝ベルダンディーと一緒にワールウインドに出勤して行った。
 何も変わらぬ朝。
 いつもとかわらぬ日常。
 あたり前のように出掛けていく二人を正面の山門の所で見送った。
 そうだ、スクルドは……
 玄関先から宙を飛んで、「スクルド研究所」と書かれたプレートが下がっている障子を開ける。
 スクルドはドライバーと機械の部品を手にしていた。
 何やらまた新しい物を作っているらしい。
「あら、ウルド。どうしたの?誰から電話?」
「誰からって、落ち着いてよく聞きなよ」
 ウルドは彼女の両肩を両手で掴んだ。
 ただならぬ様子にスクルドは面食らって硬直していた。
「いま、恵ちゃんから連絡があった……螢一が死んだって」
 スクルドの顔色が蒼白となった。
「う、う……嘘。冗談でしょ。ふざけているのよね。ねえ、ウルド!」
 震える声が次第に叫びになった。
 両手でウルドの衣装の襟を掴んでいた。
「それをいまから確かめに行くのよ。冗談にしては笑えないし性質が悪過ぎるわ」
 冗談や嘘であって欲しい。
 二人共思いは同じだ。
 転送術で猫実市中央病院の玄関に飛ぶ。
 受付に走る。
「あのう、森里螢一の家族のものですが」
 ショートカットの色白で眼の大きな女性が座っている。
「森里…」
 彼女はパソコンのキーボードに手を走らせて。
 表情を曇らせ立ち上がると優雅に一礼をした。
「この度は御愁傷様です。御遺体はこの突き当りのエレベターを地下二階に降りて正面の部屋です」
 病室じゃない。
 御遺体……。
 ウルドの膝から力が抜けた。
 走るに近い早さでエレベーターに向かう。
 人目があるのでさすがに飛ぶのは堪えた。
 スクルドは既にエレベーターの前でもどかしげに降りてくるのを待っている。
 降りて正面の部屋。
 十畳ぐら
[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ