縋るモノに麗しさは無く
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ている……そうであろう、袁本初?」
急に話を振られて困惑に目を泳がせた麗羽ではあったが、此処で嘘偽りを行っても仕方なく、
「……そう、ですわ。わたくしは、白蓮さんと真名を交換しています」
正直に話すしかない。
衝撃を受けたのは白馬義従達であった。
友を大事にする白蓮が、真名を交換した友に攻められた。一番初めに友を裏切ったのは麗羽、その事実が、彼らの怨嗟をより一層深めて堕とす。やはりこの女を生かしておくべきでは無い、と。
お前がその名を呼ぶな、と叫びそうになった。彼が目を光らせている為に強くは出なかったが、それでも麗羽を睨みつける視線は鋭さを増す。
「友との絆よりも家の繁栄を取った袁紹には、自らの手で家を終わらせる事が大きな罰となるだろう。だが逃げられては元も子も無い……それなら、こいつが逃げなきゃいいんだろ?」
「ええ、袁本初が絶対に逃げないのならその刑罰は執行するに足りる。拒む事なく、自害する事なく、心より悔いて遣り切るのなら、ね。それが出来ないのなら、今すぐ此処で私が袁紹の頸を刎ねよう」
飄々と言葉を並べる彼は楽しげで、それを受け止める華琳も同じく。
そんなモノは不可能だ。誰もがそう思っていた。麗羽が逃げずにそれを選ぶなど、二人の遣りたい事を正確に理解しているモノ達以外、誰も思っていない。
麗羽が袁家を滅ぼさないのなら生温い刑罰でしかない。万が一逃げられたのなら罰にもならない。此処で殺しておいた方が、遥かにマシなのだ。
彼は少し俯き、麗羽に聞こえるようにだけ、小さな呟きを零した。
「……俺はお前を“生かしたい”」
一寸、何を言っているのか分からずに麗羽の思考が止まる。
殺すとその口で言ったのに、生かしたいとは矛盾でしかない。
「明から聞いてるぞ。もし、夕の事を自分の責だと感じているのなら、夕が望んだ世界を作る為に、お前は生に縋りつけ……例え今から“殺される”としても、“これから先の未来で殺される”としても」
矛盾だらけの謎かけのような言葉の意味を、麗羽は理解出来ず。彼が欲しいモノを分かっていたのは、華琳しかいないのだから当然。
兵士達はこれから何をするのかと息を呑む。華琳だけが、笑みを深めていた。
「まあ、いいでしょう。出来るか出来ないか……そのモノの行動で確かめようか」
「……どうやってだ?」
聞き返す声に反して表情は人を試すようなモノ。今度は華琳が合わせて行く。
――やはり、次こそが秋斗の本当の狙いということか。だから次は私の役割。人を外れるのは私も同じで、お前だけにさせてなんかあげないわ。乱世の果てに私が望む世界を作るためには……此処で“麗羽を殺してはならない”。ならその為の対価は……一つだけ。
目を細めた彼を見やり、少し
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