縋るモノに麗しさは無く
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――これで“儒教の固定概念”に楔を打ち込める。私と徐晃の名は歴史的に見れば悪名として上がるかもしれないが、積み上げられた概念は壊してしまう方が迅速に先に進める事が多い。大陸に甘い毒を齎し、実利としての尊い命を失わせているモノの一つは……儒の思想への偏りでしょう。私が世界を変える邪魔になるのなら儒の思想さえ……敵でしかない。
どのような思想にしろ、良い所もあれば悪い所もある。儒家と法家がどうこうなど論ずる事こそ無駄……華琳はそう考える。全否定するつもりは無いが全肯定もしない。聡明な頭脳で良い部分も悪い部分も判断した上で、彼女は大陸に秩序を作り上げたいのだ。
だからこそ、袁家の処遇を帝に一任されるように画策し、この結果を大陸全土に知らしめる事で、偏り凝り固まった思想を打ち壊す事を選んだのだ。
秋斗が言わなければ自分が命じようと思っていたのだが、この流れは彼女にとって読み筋。
――けど、秋斗……まさかあなたがその程度で終わるはず無いわよね?
まだ足りない。華琳が壊したいモノは、それだけでは無かった。彼が自分と同じ高みに立とうとしているのなら、もう一つ追加するはずだと予測している。
何も言わず、華琳は彼の言葉を待った。麗羽も斗詩も猪々子も、話す事も抗う事も出来ずに、他の誰も喋ろうとしないその場には静寂だけが痛く居座っていた。
普段通り砕けた口調に戻ったのは、堅苦しい物言いをするよりも、より不敵であった方が人の心を乱せるその一点。
「まあ……殺させると言っても様々な方法がある。曹操軍が攻め入り、捕まえて断罪するのもアリだろうけど……袁家の罪を贖うのは袁家であるべきだ。だからこの戦いで俺達に歯向かった袁紹軍の全てに……袁家の征伐をさせるというのはどうかな、曹操殿?」
視線は袁紹軍の兵士達に注がれていた。自分達が暮らしていた場所を攻めろと彼は言っている。受け入れられるはずも無く、バカな事をと頭を振るモノだらけであった。
何より、そんな事を麗羽が行うとは思えなかった。当主が家を裏切るなど、誰もするとは思えなかった。家を守るのが当主の務めだ、古くから受け継がれてきたモノで、力ある者が伸し上がってきた証明そのモノ。
「いいでしょう……袁家の罪を当主である袁本初とその臣下達に贖わせる事を罰の一つとする。しかし……袁本初がソレを行えるとは思えない。罪を贖っても白馬長史に断罪されるその女が、私の命令に従うとは、ね」
脚をゆったりと組み替えて、華琳が麗羽を遠くから一瞥して声を流した。
同意、と首を縦に振る白馬義従達は、麗羽が従うなどとは欠片も考えていなかった。
「さらに、よしんば従ったとしても、公孫賛がその女を裁くかと言われても不安がある。袁本初と公孫賛は旧くに学友として机を並べていたと聞くし、真名も交換し
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