縋るモノに麗しさは無く
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を行ったなら尋ねてもいい……が、華琳自らが出した結論を読み解こうとしないのなら、曹操軍の軍師としては足り得ない。
桂花は事前に聞いていた。朔夜は秋斗と煮詰めていた。雛里は先日に秋斗から聞いた。よってこの三人は動じる事は無かった。
思い描くモノを読み取って凍りついたのは三人。稟と風と詠。
軍事的観点から見ても、政治的観点から見ても、人心的な観点から見ても……戦が終わって直ぐのこの場所で行う事にこそ意味があると、皆がそれぞれ読み取ったが故に。
今は夜。篝火が幾多も焚かれてもほの暗い闇が落ちている。
昼間にでもすればよいのだが、華琳も秋斗も、選んだのは夜だった。
人の感情が揺れるのは夜が多い。哀しみに暮れるのも、正常な判断が鈍るのも……闇が世界を覆うこの時間。
華琳の言を以って静まり返ったその場で動く者は誰も居ない。一人を除いては。
二の句を待つのは、居並ぶ将達にしても軍師達にしても兵にしても、敵対していた袁家の兵であっても変わりない。
顔を俯けたままの麗羽の隣に立つ黒の男だけが動き、どっかと腰を下ろして華琳に正対するように座り込んだ。
おかしな行動に疑問が浮かぶも、少し首を上げて彼の背中を見つめるだけで麗羽は何も言わない。復讐者である彼に対しての恐れは無く、その瞳には、己が命に対する諦観だけがあった。
「袁本初、連合にて漢の平穏への多大なる貢献……私と共に陛下をお救いしたにも関わらず、公孫賛が穏やかに治めし幽州の大地へと侵攻し戦火を広げ、徐州に攻勢を仕掛けていた袁術と与して徐州牧に任ぜられた劉備を追い詰めた」
政治のあれこれを分からぬ兵士達では、目の前にある平穏こそが大事である。
連合は正義と証明した以上、あの戦きりで乱世など終わるはずなのだ、と誰もが思う。今を生きるモノ達にとっては、あの時の戦はそれほど大きな意味を持っていた。
故に、袁紹は……袁家は悪。平穏を乱した徒が悪でないはずがない。証人はここに居る白馬の義に従ったモノ達全てである。
言葉にすれば短く綴られるだけの己が家たる大地の絶望に、白の兵士達はギシリと歯を噛みならし、血が滴るほど拳を握り込んで麗羽を睨んだ。
お前のせいで、お前が欲を押し通したから……怨嗟の矛先は、内部事情の如何に関わらず、当主たるモノに向けられて当然であった。
「さらには、陛下のおわす我が任地に攻め入るという所業。先の連合は自身がこの大陸を支配する為に起こしたモノという何よりの証明であろう。欲に溺れ、他の地の民を蔑ろにし、大陸に乱世を広げ、尊き天たる皇帝陛下に弓を引くその行い……万死に値するっ!」
鎌を一振り、勢いよく抜き放った。
突き付ける先には麗羽、そして……楽しげに笑う黒の道化師。
よく言う、と秋斗は苦笑していた。腹の中に隠し持
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