暁 〜小説投稿サイト〜
こけし
第二章

[8]前話 [2]次話
「えっ、こけし!?」
「こけしがどうかしたの?」
「御免なさい、ちょっと」
 強張った声でだ、梨紗に言うのだった。
「私こけし駄目なの」
「こけしが?」
「見ているだけで怖いの」
 梨紗に対してこうも言った。
「だからね」
「それでなのね」
「うん、お家に入ることは」
 駄目だというのだ。
「折角呼んでくれたけれど」
「じゃあ喫茶店か何処か行く?」
「悪いわね」
「いいわよ、けれどね」
 首を傾げさせて言う梨紗だった。
「何でこけしが嫌いなの?」
「嫌いじゃなくて怖いの」
「どうして怖いの?」
「何でか知らないけれど子供の頃からね」
 その時からだというのだ。
「それこそ物心ついた時から」
「ずっとこけしが怖いの」
「それで近寄ることもね」
 そうしたことすらというのだ。
「駄目なのよ」
「それはかなりのものね」
「自分でもどうしてかわからないのよ」
 こけしが嫌いな理由がというのだ。
「けれど駄目なのよ」
「まあとりあえずね」
 ここでだ、こう千代に言った梨紗だった。
「喫茶店にでも行ってね」
「そこで、なのね」
「お話しよう」
 こう言うのだった。
「そのこけしが怖いことについてね」
「そうね、それじゃあ」
 千代も梨紗の言葉に頷いてだ、そしてだった。
 二人で梨紗の家の近くにある喫茶店に入ってだ、そこでコーヒーを飲みながら向かい合って話をはじめた。
 そこで梨紗はだ、こう千代に言った。
「あんたの怖がり方はね」
「それは、っていうのね」
「普通じゃないわ」
 もうそう言っていいまでだというのだ。
「どう見てもね」
「そうよね、自分でもそう思うわ」
「もの心ついた時からよね」
「そうなの」
 それこそというのだ。
「本当に怖くて仕方がないの」
「それって幽霊かお化け怖がるみたいじゃない」
「そうかもね」
「自分でもわかってるのね」
「そうなの、とにかく怖くて」
「見たくないし近寄りたくないし」
「こけしってそこにあるだけよ」
 置いて飾るだけのものだとだ、梨紗は千代に話した。
「だからね」
「怖がることもなくて」
「そう、気にすることもないわよ」
「けれどそれがね」
「千代ちゃんにとってはなの」
「怖くて仕方がないものなの」
 到底、というのだ。
「それがどうしてかわからないけれど」
「そこよ、怖がるからにはね」
 そこにだと言う梨紗だった。
「理由があるでしょ」
「怖がる根拠が」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「絶対にそうだから」
「怖がる理由には根拠がある」
「何でも根拠があるのよ」
 怖がるにしても他のことにもとだ、梨紗は千代に言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ