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お金
第三章
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「名前でね」
「じゃあ佳子さん」
「ええ、これからね」
「このお店で働かせてもらいます」
「一緒に頑張ろうね、私はこのお店に入って一年だけれど」
「一年ですか」
「そう、一年なの」
 それだけ働いているというのだ。
「その一年の間わかったことをね」
「それをですね」
「教えさせてもらうから」
「お願いします」
「そういうことでね。南ちゃん可愛いし胸も大きいから」
 見れば佳子は南の胸をよく見ている、背が高いので見下ろす形になっている。そのうえでの言葉である。
「人気出るわよ」
「お客さん集められますか」
「ええ、後はね」
「明るく礼儀正しくですね」
「まずはそれが第一だから」
 店長が言った通りにというのだ。
「だからね」
「それで、ですね」
「お店のことはおいおい教えさせてもらうから」
 佳子は南に仕事のことも言った。
「明るく楽しくね」
「お願いします」
 南は礼儀正しく応えた、そしてだった。
 この日からアルバイトをはじめた、南は実際に明るく楽しく働いた。するとだった。 
 思ったよりもよく動けた、それで。
 佳子からもだ、こう言われた。
「前に何処かで働いたことあるの?」
「いえ、はじめてです」
 こう佳子に正直に答えた。
「働いたのは」
「そうなのね」
「駄目ですか?」
「いや、いい動きね」
「いい、ですか」
「フットワークもいいし」
 何処かスポーツの様にだ、佳子は南に言った。
「それに手の動きもね」
「いいですか」
「もう要領掴んでる?」
 佳子はこの言葉は首を少し右に傾げさせてこうも言った。
「ひょっとして」
「いえ、戸惑ってますけれど」
「そうなの」
「何もかもがはじめてですから」
「その割には本当に動きがいいわね」
 佳子はまた言った。
「充分よ、私の最初の時よりずっといいわ」
「そうですか」
「とてもね、これは期待していいかもね」
「ううん、じゃあ期待してもらって」
「結構っていうのね」
「はい、そう言っていいですか?」
「南ちゃんが阪神ファンならいいわよ」
 岡田彰布元監督の言葉だからだ、現役時代はお笑い芸人の様な顔と言われていたが実は育成と采配を備えた中々の理論派である。
「それなら」
「はい、野球は虎です」
「私もよ、じゃあいいわ」
「期待してもらって結構です、って言っても」
「ええ、じゃあ本当にね」
 佳子は微笑み南に言った。
「頑張ってね」
「わかりました」 
 こうして南のアルバイトがはじまった、南はよく働きよく動いた。それで学校でもクラスメイト達に生き生きとした顔でこう言うのだった。
「いやあ、いいわ」
「アルバイトがなのね」
「いいのね」
「毎日充実してるわ」
 こうも言うのだった
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