第四章
[8]前話
「それで知ってたんだよ、僕も」
「そうだったのね」
「それでもね」
このことはだ、涼真は強く言った。
「もうそうしたお店は使っていないから」
「私と結婚したから」
「そう、だからね」
それでとだ。涼真は理央に話した。
「今は風俗店自体にも行ってないよ」
「それならいいわ」
「うん、けれどね」
「ええ、まさかね」
お互いにだ、苦笑いを浮かべて言い合うのだった。
「お互いこのホテルを知っていて」
「使っていたなんてね」
「ちょっとね」
「思いも寄らなかったね」
こうそれぞれ話すのだった。
「本当に」
「全くよ、ただ」
「ただ?」
「これからはね」
理央は夫に対してだ、ここは強い声で言った。
「二人でね」
「二人だけでね」
「ここに入る時は私達だけにしましょう」
「夫婦だけでね」
「浮気は駄目よ」
これは絶対に、というのだ。
「いいわね」
「わかってるよ、僕だってね」
涼真もだ、微笑み妻に応えた。
「そうしたことはね」
「守ってくれるわね」
「浮気はしないよ」
このことは絶対に、というのだ。
「お酒は飲むけれど」
「そうよね、私もね」
理央も言うのだった。
「浮気はしないから」
「絶対によね」
「そう、しないから」
夫にこのことを約束するのだった。
「そうしたことはね」
「うん、それじゃあね」
「ホテルに入ったから」
理央は夫と約束し合ってからだ、それからだった。
自分から服を脱ぎつつだ、彼にこうも言った。
「わかるわよね」
「うん、よくね」
「最初はどうするの?」
「お風呂に入る?」
涼真も自分から服を脱ぎつつ妻に言った。
「これから」
「二人でお風呂に入って」
「うん、身体を奇麗にしてね」
それからというのだ。
「お風呂場で、でもいいし」
「ベッドでも」
「ソファーでもね」
涼真はソファーも見つつ話した、部屋の中はわりかし広く人が寝られるだけのソファーも置かれている。テレビもある。
その部屋の中でだ、理央は涼真に言い涼真も応えたのだ。
「いいけれど」
「まずはね」
「身体を奇麗にしてね」
そして、だというのだ。
「それからね」
「何ならお風呂場の中でどうかな」
夫はまたこう言った。
「まずはね」
「一回?」
「そう、お風呂場の中で」
「別にそれでもいいけれど」
「何はともあれ最初はだね」
「お風呂に入りましょう」
「そうしようね」
二人で服を脱ぎながら話をするのだった、そのそれぞれがかつては別の相手と入っていた部屋で。夫婦で楽しく過ごすのだった。
うっかり失言 完
2014・11・19
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